民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
21世紀の民族教育を見つめて

民族学校の現場から<5>



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数学はすべての生活に関連する
鄭台楝(東京韓国学校中高・数学教師)

 ユネスコ(国連教育科学文化機関)は、今年2000年を「数学の年」として宣布しました。クリントン米国大統領は、97年の年頭教書を通して、米国を「数学強国」にすると強調しました。

 米国の近年の好景気は金融市場の活況によるといわれているが、金融市場を支えているのは金融数学であることはいうまでもありません。

 ところで、学校で数学を教えている私が生徒たちからよく受ける質問のひとつは、「数学を習ってどこに使うか」です。

 今日、多くの人々が求めているもののひとつは、「最も合理的な方法を見つけること」です。最大の効率と利益を生むという発想から、人工衛星を打ち上げる時に生ずる大部分の問題も数学的に解決されるのです。

 過去には適当に作ったものでも、数学が発達すればするほど、もっと効率的で正確なものを作ることができるようになりました。

 数学なくしてはロクにできることは何もない、と言えるでしょう。

 古代ギリシャの数学者たちは、三角形の性質を利用して川を渡らなくても川幅を測ることができるようにしてくれ、山に登ってみなくても山の高さがわかり、月までの距離も測ることができるようにしてくれました。洪水のために川が氾濫して誰の土地であるか区別できなくなった時にも、幾何学がこれを解決してくれました。

 数学者はまた、ギリシャのパルテノン神殿やエジプトのピラミッドを設計する時、美しい「黄金率」を提案し、必要な石の量を教えました。地球が丸いことを発見し、太陽を回る惑星の軌道が楕円であることを発見したケプラーの業績も、ギリシャの幾何学がなかったら成しとげられなかったはずです。

 このように、数学は時代ごとに新しい学問を誕生させてきたのです。これからもそうなるでしょう。

 現代人の生活といちばん密接な関連を持っている天気予報も、数学がなければできないはずです。

 台風が吹いたり、雨が降ったりする気象変化と、地震や海流の流れなどを分析し、予測するためには、高度の微分方程式を解かなければならないからです。

 ニューヨークの金融市場では、数1000人の数学者たちが新しい金融商品を作っている。国民年金や退職金、医療保険など、経済活動によって派生する経営上の問題や企業評価なども、数学者の手によってできるのです。

 世界経済の流れは、数学者たちが動かしているといえる。このように、数学は、経済分野をふくめた日常生活の全般に深くかかわっています。

 多くの生徒たちは、「数学は理科系に進学する学生だけが必要だ」と思っている。しかし、それは学生たちの誤解です。数学は、人の心を総合的に訓練する学問でもあります。単純に科学を学ぶための道具ではなく、正しく考え、正しく表現する方法を提供する言語なのです。

 韓国の「第六次教育課程」の数学教育目標にも、「数学の基礎的な知識を持たせ、数学的に思考する能力を育て、それを活用して合理的に問題を解決できるようにする」と記されています。

「なぜ? どうして?」という疑問を持って探求し、もっと効率的で合理的な方向を求めるなら、思考能力そのものを育てる数学を学ばなければならないのです。 (2000.12.06 民団新聞)



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