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元「慰安婦」の訴訟棄却したが

東京高裁、名誉回復へ独自判断も



記者会見で判決への
怒りを述べる宋神道さん

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「国際慣習法に違反」…国の法的責任認める

 第二次大戦中、旧日本軍の「従軍慰安婦」にされ非人道的な扱いを受けたと主張、国に対して国会での公式謝罪と1200万円の国家賠償を請求していた在日韓国人、宋神道さん(78)=宮城県在住=の控訴審判決が11月30日、東京高裁民事第一六部であった。

 鬼頭季朗裁判長は、宋さん側の訴えそのものは棄却したが国際慣習法違反の事実については認定、杓子定規だった一審よりもさらに踏み込んだ。また、在日韓国人の日本政府に対する請求権についても「完全かつ最終的に解決した」とのこれまでの解釈を否定するなど、「独自の判断」が注目されている。

 判決文のなかで鬼頭裁判長は弁護側の主張を一部認め、「慰安婦」の労働が強制労働条約の規定する強制労働に該当し、醜業条約の適用対象となる「醜業」にあたるとの判断を示した。原告側代理人、藍谷邦雄弁護士よれば、「慰安婦」の損害を法的責任として認めたのは釜山従軍慰安婦・女子挺身隊公式謝罪等請求訴訟(98年4月、山口地裁下関支部)を除けばなかったことだという。

 ただし、国家の法的責任は認めたものの、宋さん個人の損害賠償請求権については一審同様、条約の趣旨からして認められないと退けた。さらに、民法における謝罪及び損害賠償請求権についても、損害賠償請求権の存続期間(除籍期間)が韓日請求権協定の施行日である1965年12月18日から20年経過した85年12月18日をもって満了したとの考えを示すなど「二律背反」(藍谷弁護士の話)の内容となった。

 宋さんは16歳のとき、仕事の内容を知らされず、中国・武昌の慰安所に連れていかれた。



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