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日本に韓国映画紹介して12年

アジア映画社の実績を追う



帰らざる海兵

 韓国映画の人気が高まる中、日本に韓国映画を紹介し続けてきた草分け的存在の配給会社「アジア映画社」(朴炳陽代表)。発足以来、韓国クラシック名画から新作まで数々の作品紹介をはじめ、韓国映画を日本で定着させるために映画祭の企画にも協力してきた。同社ではこのほど「韓国クラシック名画の素晴らしさを次世代につなげたい」との思いから、韓国映画の黄金期と呼ばれた60・70年代の名作8本を「韓国映画ビデオ文庫」(日本語字幕付)として発売を開始した。


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ノタジ



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「風吹く良き日」自主上映がきっかけ

 副代表の兪澄子さんは、同社発足について83、84年頃、夫の朴さんが参加していた日本の演劇グループ「発見の会」が李長鎬監督の「風吹く良き日」を全国で自主上映したことがきっかけになったと話す。

 同映画は、田舎から仕事を求めてソウルに上京した3人の男にスポットを当て、韓国社会の底辺で生きる若者を通してさまざまな問題を浮き彫りにした作品。80年代の韓国ニューウェーブ到来を告げた作品としてヒットした。


ハンネの昇天

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ライフワークで日本に紹介

 この経験をもとに「日本で良質の韓国映画を上映したい」との思いから88年3月、同社を発足させた。しかし、当時はミニシアターやアジア映画を上映できる劇場もなく、上映に際しては新聞や雑誌社の応援を得ながら行った。

 発足後、初上映した作品は20代の若者を等身大で描いた、李奎炯監督の「青春スケッチ」と「昶浩(ペ・チャンホ)監督の「鯨とり」。88年のソウルオリンピック開催を前後して、日本で一部の韓国映画が紹介されはじめていたが、座席が埋まるまでには至らなかった。

 その後も自主上映などを続ける一方、87年にベネネチア国際映画祭で主演女優賞を受賞した、林權澤監督の「シバジ」などの上映効果も手伝い、日本社会での道が開けてきたという。


誤発弾

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クラシック名画から新作まで
商業ベースに乗らぬ良作に光

 兪さんは「商業ベースに乗らない硬派の作品は赤字を覚悟で紹介してきた」と話す。90年代に入り「韓国クラシック名画や映画史を知りたい」という声も聞かれる中、94年4月9日から5月22日まで、東京の300人劇場で開催された「韓国映画の全貌」(50作品を一挙上映)の企画にも協力した。

 この時上映された、南北分断によってもたらされた離散家族の苦悩を描いた、林權澤監督の「キルソドム」は、関係者の強い要望によって、三百余人の議員を集めて日本の国会でも特別上映された。


荷馬車

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80作品を一挙上映

 また、96年12月26日から2月16日まで、韓国クラシック名画の名作を含む80作品を一挙上映した「韓国映画祭1946〜1996」(朝日新聞社主催)の企画に協力、日本と韓国の映画交流が制限された状況の中で、版権取得、散逸した資料収集、字幕翻訳などに苦労を重ねた。

 「韓国映画ビデオ文庫」の8本は、同映画祭で上映された80作品の中から厳選されたもの。韓国で20世紀最高の名画に選ばれた、兪賢穆監督の「誤発弾」、名優、金勝鎬の代表作「荷馬車」など、これほどの名作は韓国でも二度と集まらないと言われる60年、70年代の傑作を揃えた。


朴さん

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映画祭の企画に協力…名作ビデオにも着手

 兪さんは「日本社会で商業ベースに乗らないからと紹介されなかった名作を在日だから紹介したかった」と語る。今回のビデオ化は、現代史の大きなうねりの中で翻弄された韓国史を映画を通して実感し、民族の心のメッセージとして次代につなげたいという気持ちが込められている。

 価格は4800円(各一本、税別)。問い合わせは、ブロードウェイ(03-3406-7710)まで。

(2000.12.06 民団新聞)



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