民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー

足下から理解の輪を



 先日、フジテレビで放映されたドキュメンタリー「小さな留学生」を見た。主人公は中国出身で小学3年生の張素ちゃん。来日した翌日から日本の小学校に転入するが、当然日本語は分からない。授業が終わった途端、大粒の涙を流しながら付き添ってきた母親の元へ駆け寄った。

 1カ月後、学校側は仲間に入れるようにと、全校生の前で紹介した。この時の素ちゃんの言葉がふるっていた。「私たちのこれからの時代に平和の鳩を飛ばしたい」。周囲の支えや同級生との交流を通して、たくましく成長した。日本で暮らしたのは2年足らず。映像は、父親の仕事の都合で中国へ戻った13歳の素ちゃんを映し出した。

 日本で素晴らしい体験をしたと語った。将来の夢は「日中交流の外交官」になることだと話し、学校で日本語の勉強を続けている。

 約20年前、韓国語を学ぶため1年余り留学した経験を持つ。当時、今以上に本国の人たちの「在日」に対する理解は希薄で、誤った知識や偏見などにより、挫折や疎外感を味わい帰日する同胞を何人も見た。

 今、彼らが韓国に対してどのような思いでいるか知る由もないが、その距離感を縮めていてくれたらと思う。

 韓国へ留学する同胞や日本人は増えている。言葉や文化を学ぶことはもちろんだが、国籍や人種を超えお互いを理解するための作業を進めてほしい。素ちゃんも、異国で将来の夢を決定させるほどの大きな財産を得た1人に違いない。

 21世紀を目前に、韓日交流が活発化する中、韓国、日本、そして「在日」の真の人的交流が発揮され、三者がそれぞれの橋渡し役となれるよう、足元から理解の輪を広げたい。(U)

(2000.12.13 民団新聞)



この号のインデックスページへBackNumberインデックスページへ


民団に対するお問い合わせはこちらへ