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地方参政権獲得へ共に汗を流そう



 20世紀が終わろうとしています。

 今世紀前半の韓日間の歴史から生まれた私たち「在日」が、永住外国人の地方自治体参政権獲得運動を進め、日本の国会でまさに法案成立かどうかの審議をしている事実は、与党の幹部議員の言葉のように、まさしく「歴史的意義がある」と言えます。

 アジアにおいて初めての試金石となる運動を、民団が主体的に行ってきた意義は大きく、その成り行きを世界が注視しています。


■国会審議と前団長の意見陳述

 先般の国会審議では、3回目の趣旨説明と各党質疑、さらに参考人聴取を行い、採決できる段階までいきましたが、次期国会に持ち越されました。20世紀中の実現ができなかったことは遺憾です。ほぼ論点は出尽くしました。私たちは、来年の通常国会で必ず成立するものと信じています。

 今度の参考人聴取では、実現のために長い間努力してきた辛容祥前中央団長が感銘深い意見陳述をしました。「私たちは半世紀以上も日本に住んで、ここに生活の根拠をもっています。まぎれもなく私たちは地域住民です。ただ資格がないのです」と。

 地域で私たちは自治会や町内会長として隣近所の人たちのお世話もしています。また学校ではPTAの役員を引き受けたりして仲良く親密に付き合ってもいます。

 ただ、地域の選挙の時、投票に一緒に行こうと誘われた際、何と言ってよいか大変「つらい」思いをします。ゴミ、下水道処理問題など、町内に何か身近な問題が起きても、私たちは門外漢という立場になります。それによって日常生活で目にみえない壁ができてしまいます。これではお互いに心から助けたり助けられたりすることはできません。

 現在、全国自治体の半数近い約千五百の自治体が、同じ住民である永住外国人に地方自治体選挙権を付与するよう決議し、国に早期の法制化を求めています。95年には最高裁が私たちに付与しても「憲法違反ではない」と判示しました。これは全国自治体の決議と私たちの運動が合憲であることを立証したものといえます。


■日本国民の民主意識と寛容さ

 昨年4月の統一地方選挙の前に実施された全国世論調査において65%、先月発表された世論調査でも64%が付与に賛同しています。この間、一部政治家やマスコミが外国人排除の反対論をくりひろげていますが、調査結果にはその影響はさほど見られません。

 これらは日本国民の高度な民主意識と寛容さを示すものであり、同じ地域に住む住民同士は仲良くして、ともに地域の発展に協力しあおうではないかという日本国民の信号でなくて何でしょうか。

 反対者たちは国民主権や「有事」を理由に、帰化論に固執しています。しかし、民主主義においては相手の自尊心を尊重し、相手の立場と長所を生かすことが大切ではないでしょうか。前上智大学総長ヨゼフ・ピタウ氏が日本国籍を取得しようとした時、日本の友人にこう諭されたといいます。「国籍を取らなければ日本に貢献できないというのはおかしい。国籍はどこであれ、友情を深められるようにした方がいい」と。

 各地方は、自治体議会での意見書採択と管内出身の国会議員への要望に一層力を入れて行きましょう。地方選挙権の獲得は、今後日本社会で安定した住民として生きていく上での新しい枠組みとして、是非必要なものです。21世紀を喜ばしい世紀にするために、共に汗を流しましょう。

(2000.12.13 民団新聞)



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