民団新聞 MINDAN
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銀行設立に関する提言

21世紀委員会・基盤づくり部会



全同胞の力を合わせて新銀行設立へ進もう

 韓国系の12の信用組合が既に経営破綻をし、大手の複数の信用組合についても自己資本比率が4%を切ったと新聞で報じられ、われわれの信用組合は、いま、まさに危機的状況にある。銀行化の構想は以前から韓信協にあったが、2000年4月17日に、韓信協を一本化して銀行化しようという構想を打ち出した。2000年10月3日には、東京商銀が「韓日銀行」と提携することを発表し、2000年11月9日には、韓信協が、内容の良い組合が先行して合併し、その後に残りの商銀を合併統合するという韓信協構想案を示した。だが、去る12月16日、金融再生委員会は、民族金融機関の最大手である関西興銀と東京商銀に対して破たん処理を決定した。同胞社会全体に大きな衝撃を与えただけでなく、少なからずの混乱をもたらしている。局面は一変している。これにより、民団主導で1日も早く事態を収束をさせなければならない状況になった。この様な状況下で、民団は、如何に小異を廃し、団員の利益のために動くべきかを以下に提言するものである。


【何が問題だったのか】

不明解な銀行化論
2次破綻の恐れ否定できず

 まず、銀行化そのものについて議論をすべき余地はあるが、その事はここでは論じない。

 その理由は、次の通りである。

 受け皿を作らなければならないことは誰もが認識していた。受け皿を作らなければ、韓国系信用組合は消滅するのであるから、当然である。どのような形にすべきかは、今までには諸説があった。

 では、なぜ今まで諸説が紛糾し、まとまりを欠いたのであろうか?その点について、説明をする。

 銀行化をなすには、次の3点をクリアする必要があった。これは非公式的に漏れ聞こえてくる金融庁の考え方である。

 (1)2次破綻がないこと。

 (2)在日韓国人の総意に基づくものであること。これは具体的には、民団のバックアップがあると言う事を意味する。

 (3)韓国政府が認知していること。

 このうち、最大の難関が(1)の2次破綻のない銀行を作る、という事であった。2次破綻のない銀行化案を作ることができれば、当然に民団は支持するし、民団の支持があれば、韓国政府も認めるであろう、という流れであった。

 それ故2次破綻のない銀行化案をどうやって作るかが、これまでの最難関の問題点であった。

 2次破綻のない銀行を作るには、次の条件を満たす必要がある。

 (1)不良債権を引き継がない

 (2)充分な資本金がある

 (3)銀行業務を支えるだけの人材が居る


 (1)の不良債権を引き継がないというのは、全的に金融庁の職務であるし、われわれとしてもそれを信頼してよい部分である。

 受け皿銀行を作ることができれば、その後に金融庁が破綻信用組合を指定し、新銀行はそこの優良債権だけを引き継ぐというのが手続きの流れである。だから受け皿銀行を作ることができれば、それは当然に不良債権を引き継がないことを前提としている。

 (3)の銀行業務を支えるだけの人材が居るか?という問題は、韓信協側は、都市銀行より優秀な指導者を何人かスカウトしてくれば解決できる程度に人材を備えていた。

 一番大きな問題は、(2)の充分な資本金を集められるのかという事であった。

 これができなかったのは、2次破綻のおそれを明確に否定できなかったからである。

 それは信用組合の正確な情報開示のないままに銀行化が論じられてきたからである。このため真実が分からず、2次破綻の疑いを抱いた団員は、容易に出資の意思表示をしなかった。

 韓信協構想も「韓日銀行」も、在日韓国人の総意を得られず、また、それが故に韓国政府の認知も得られなかった。

 この3つの条件をクリアしない限りは、日本の金融当局は銀行業の許可を出さないのは至極当然な事であるのに、いままでは、ただ一つの条件もクリアできなかった。

 それが、韓国政府の支援があるであろう、という事で状況は一変した。3つの条件のうちの1つが初めてクリアする可能性があるからである。

 後は民団が、2次破綻のない銀行を後押しすれば、3つの条件の総てを満足させられることになる。

 ならば、民団はどのような役割を果たすべきなのか、それを論ずる前に、何故に民族金融機関が必要なのかを再確認しておこう。


【民族金融機関の必要性】

同胞の72%が利用
在日1世が築いた財産

ネットワークインフラの崩壊

 商銀(民族金融機関の意味で用いる。以下同じ)設立当初は、商銀は、日本の金融機関から資金を借りられない同胞商工人を助けるために、無くてはならない存在であった。

 しかしながら1987年の統計データによると、民族金融機関だけと取り引きしているのは11・2%であり、民族系金融機関を主とし、日本の銀行を従としているのが、27・1%である。約58%が、日本の銀行だけ、あるいは民族金融機関を従とした付き合いをしている。

 このことから、13年前、民族金融機関を主とする者とそうでない者との利用割合は、4対6であったと言える。現在はどうであろうか。大手銀行の中小企業への進出、継続的な帰化、という状況を考えれば、4対6の比率を維持できていれば、上出来、という状況ではないだろうか。

 もちろんマイナス要因ばかりではない。民族金融機関との付き合いがあれば、それを交渉のネタとして、日本の銀行から有利な条件を引き出すのに使ったりもできる。実際、先の統計でも、何らかの形で民族金融機関と付き合いのある比率は、72・3%にのぼる。案外こういう使われ方が実体かも知れない。

 以上より、商銀は、草創期のような切実な資金需要を満たすためではなく、日本の銀行との棲み分けの中で、効果的に利用されるようになってきている、と言えるだろう。

 今一歩突っ込んだ言い方をするならば、経済的な存在の必然性は、草創期ほど強くはなくなってきているということである。

 ところで、商銀とは、経済的な側面からだけの存在だったのだろうか?

 商銀が果たした機能の中で、最も大きいのが、民団のネットワークを維持し続けてきたという点である。民団は草創期にあっては、各団員の家を戸別訪問し、団費を徴収した。その過程に於いて、各人の抱える色んな問題を把握し、相談に当たってきた。

 しかしながら、いま現在定期的に団員の家を戸別訪問している民団が一体どれだけあるだろうか。

 しかしながら商銀は、日掛け、月掛けという預金獲得活動を通じ、毎日団員の家を戸別訪問してきた。民団が相当早い時期に機能を失った、団員間のネットワークを維持し続けてきたのが、商銀であった。

 このネットワークがあったお陰で、団員同士は、どこに誰が居るか、という事を知ることができた。

 仮にこのネットワークが崩壊した場合を考えてみよう。

 団員の多くは、通名を使って生活をし日本社会に埋もれている。外見からだけでは、誰が在日か分からないのは、日本人もわれわれ自身も同じである。

 ネットワークが無くなったならば、多くの者は、そのまま日本社会に埋もれるだけになってしまうだろう。

 すなわち、商銀ネットワークの崩壊は、民団社会の崩壊を意味し、民団そのものの構成員がどこに居るか分からなくなってしまうことを意味する。

 その後に、日本国籍を取得してしまえば、団員は完全に日本人であり、しかも民団を必要としない日本人であるから、その時に民団の綱領を変えても、変更された綱領の対象となる者の存在が分からなくなっている、という可能性が高い。

 なすべきは、商銀ネットワークの崩壊を防ぐことである。ネットワークの崩壊は、民団社会の崩壊を加速するだろう。

 これは経済的効果とは比較できないくらいに強烈なインパクトを持つ。


成功の体験

 われわれが金融機関を失った場合、それは著しくプライドを傷つけられることである。そのような感情を突き詰めると、1世が築き上げたものを、その積極的な理由もなく、次の世代に伝えられなかった己をふがいなく思う気持ちに行き当たる。

 われわれは在日の歴史を次世代に伝え、在日の財産を次世代に引き渡す、重大な責務を負っている。それを何の努力もせず、ここでみすみす失ってしまうのでは、己の良心に恥じるばかりである。

 民族教育は、学校だけでするものではない。現実に生きている姿そのものが民族教育となるのである。

 1世が信用組合を作った成功体験。それはわれわれに経済基盤を与えると同時に、民族としてのプライドも与えたのである。

 われわれ世代も危機に直面している民族金融機関を救ったという成功体験を、次世代に示さなければならない。これこそが生きた民族教育である。

 小論、異論を廃し、危機からの脱出を見事にやり通したならば、日本人からの尊敬も勝ち取ることができ、在日の存在意義はますます高まるであろう。

 何年経っても在日が日本から消えないだけの経済基盤を、われわれは維持しなければならないのである。

 われわれは困難に立ち向かい、成功する必要がある。この感情は、ぜに金ではない。われわれが、われわれであると言うためには、商銀を潰す訳にはいかないのである。

 われわれは、在日の存在証明として、これを維持し、発展させるべき責務を負っている。


【民団が産婆役に】

民団中心に資本募集を
総意糾合こそ韓日が認知

行動の時

 3つの条件のうちの1つが初めてクリアされた今こそ、民団が動くときである。今なすべきは、

 (1)民団が中心となって資本金を集める

 (2)優良信用組合を銀行化する

 (3)その他の信用組合が破綻しているか否かについては、金融庁の判断を尊重し、優良債権を速やかに受け皿銀行に引き継ぐ

 (4)資本金が足りない場合は、韓国政府に支援を要請することがありうる

 こうすることによって、在日韓国人の総意に基づく銀行という形を作れるし、2次破綻のない銀行を作ることが可能である。

 以下、何をどうすべきかについて具体的に見ていく。


資本金の規模

 2000年3月末の信用組合全体の預金高は、約2兆1200億円である。これの8%は約1700億円である。4%だと約850億円になる。この数字の意味は、こうである。

 850億円以下の資本金では、自己資本比率が少なすぎ、業務改善命令を出されてしまう。簡単にいうと、破綻である。1700億円であれば、海外に支店を置いての業務も可能なレベルになる。

 以上より、現在の預金をそのまま引き継ぐとなると、少なくとも1000億円の資本金は必要になる。

 更に厳密な計算をしてみよう。

 受け皿となる商銀の出資金は資本金になるから、その部分は1000億から減る。また、銀行化に賛同しない商銀もあるので、その部分の預金を考える必要はなく、更には、破綻した商銀の整理の段階で、債権と相殺される預金も相当の金額に上ると予想されることから、その部分の預金も減少することになる。

 この問題はわれわれ自身の問題であるから、われわれ自身で資本金を獲得すべきである。

 目標設定額をいくらにするかは難しい問題である。仮に1000億だとすると、2000年3月末の団員の総世帯数が12万944世帯であるから、1世帯当たり82万7000円という金額になる。これはとんでもない金額である。更にまた、発想を変えて検討してみると、同胞経済人は1億出せる会社を、1000社持っているだろうか?という疑問にぶつかる。これもまた、とんでもない数字である。

 勿論、対象を民団員のみに限る必要はなく、総連系同胞にも、帰化同胞にも、出資を呼びかけるべきである。しかしそれにしても、1000億というのは莫大な金額である。

 だが、確実に2次破綻のない銀行を作ろうとするならば、このくらいの目標を掲げなければならないだろう。

 具体的な金額は戦略的判断を含むので、民団で策定すべきである。

 目標を高く定めるならば1000億円、低く定めるならば、400億円、と言ったところである。この範囲のどこに落とすかは、民団の判断による。


発起人集会

 民団中央の団長を発起人代表として、発起人集会を持ち、出資の予約を集めると同時に、その趣旨を日本の金融庁に説明すべきである。すなわち、

 (1)2次破綻がないだけの資金を集める

 (2)それは民団が中心となってやる

 (3)当然韓国政府は認知するであろう

という事柄である。よって、銀行設立の内認可を速やかに出していただきたいという事である。その後は、破綻した信用組合の優良な債権のみを引き継ぐ。

 この発起人集会には、韓信協加盟組合をはじめ各界各層が賛同してもらわなければならない。彼らは、それぞれに銀行設立の可能性が高いと思う方法を模索してきた。それぞれがその時に最善と思う方法を取ってきた努力を評価する。

 しかしながら、銀行設立を制約していた条件に決定的な変化が訪れた今となっては、民団の下に大同団結すべき時である。


【検討しておくべきこと】

情報開示で安心感
付加価値の徹底研究必要

企業の継続性

 豊富な資本金を集めれば、短期的な2次破綻はない。

 2次破綻とは、不良債権を引き継いだために、それを処理できず、新設銀行が破綻に追い込まれることを指している。新設銀行は金融庁の監督の下、優良債権のみを引き継ぐのであるから、2次破綻とは無縁である。もちろん引き継いだときには優良債権でも、その後に不良債権となることは、あり得ることである。しかしそれは人知の及ぶところではない。ここでの2次破綻がないというのは、人知の及ぶ範囲内での、意図的な不良債権引継による、連鎖的な破綻はないという事である。

 しかしこれとは別に、銀行業が不振で、長期的に経営が傾き、破綻をするという可能性は、別個に存在する。

 この危険は、総ての経済主体について存在しているものである。

 現在は、既存の銀行ですら、合併をし、規模の拡大を計って生き抜こうとしている時代である。それゆえ信用組合を銀行にするだけで生き残れると楽観することはできない。また、いくら優秀な人材が居たとしても、信用組合の経験しかないのであるから、銀行業務に慣れるには、それ相応の時間を要するだろう。さらには、破綻した信用組合からの優良債権の引継という業務も加わる。

 混乱は複数年続くと見るのが妥当であろう。

 しかしながらそれを理由にして、いつまでも銀行業務を積極的に行えないようでは困るのである。混乱を理由として赤字を出すことを容認できないのである。

 よって銀行設立当初より、混乱収束後をにらんで、継続的に収益を上げられる企画なり、形を作っておく必要がある。

 たとえば、2002年のワールドカップ韓日共同開催を睨み、サッカーくじを独占販売させてもらえないか、政府と交渉すべきである。日本側は難しいとしても、韓国サイドの分を日本で売る場合は、われわれの銀行でのみ買える、というようにできたなら、大きな利益を得られるだろう。

 金融自由化の時代であるから、われわれの銀行のみを特別扱いしてもらうのは難しいが、何らかの条件を満たせば、当初の何年間かはハンディをつけてもらえるようなものがあるはずである。

 それらを徹底的に研究すべきである。

 また、ペイオフを睨んだ場合、積極的な情報開示無しには、客の信頼をつなぎ止めることはできないということを肝に銘じるべきである。今回の韓信協構想、「韓日銀行」案が、独自にうまく機能しなかったのは、詰まるところは適切な情報開示ができなかったことに起因していると言える。

 新設銀行は、客の信頼をつなぎ止めるためには、どのような情報をどのような形で提供するのがベストなのかを研究し、実行すべきである。


【銀行設立への青写真・短期的視点から】

外部からプロ登用を
優秀な既存職員の有効活用も

経営陣

 日本の銀行自体が、合併やリストラをしなければ生き残れないような厳しい経済環境に置かれているのだから、新銀行も、その競争の中で生き残れるような規模を持ち、人材を擁していなければならない。

 民族金融機関という旗印を掲げることは、効率化を無視しても、同胞のための金融需要をまかなう事がある、という事を意味する。一方で、営利社団法人は効率的な経営により、利益の極大化を目指す使命を帯びている。両者は相反する命題である。

 矛盾する二つの使命を果たすためには、新銀行の役職員には次の資質が必要である。

 先ずは、使命感が高くなければならない。第二に、儲けられるところでは、しっかり儲ける経営センスが必要である。それは銀行経営のプロであるという事を意味する。

 こうなると、信用組合時代のように、頭取が一方で事業をしながら、片手間に銀行経営をする、という事は許されなくなる。それは、頭取を支える取締役陣についても言えることである。

 初代頭取については、銀行経験者でなければならないという事、韓国から多額の支援をしてもらうという事から、韓国から受け入れるのが妥当であろう。もっとも日本で事業活動を行うのであるから、日本の金融界にも明るい人を推薦してもらうべきである。

 これに合わせて銀行実務を指導してもらうために、相当数の銀行マンの出向を韓国の銀行や日本の銀行にお願いしなければならないだろう。

 この様にして既存職員を鍛え、短期間の内に韓国から支援してもらった最大四百億の資金を返済しなければならない。


雇用の問題

 枠作りは、きちんとした情報公開と、しっかりした理念があれば、できることである。しかしながら、枠の中に入る中身の方は簡単には行かない。外部から銀行経営のプロフェッショナルである、優秀な人間を迎えるのは勿論のことであるが、信用組合内部の、優秀な人間が外部に流出しないような努力をする必要もある。

 2000年3月現在の役職員は、2541人である。1世帯平均4人として、約1万人の生活が、信用組合にかかっている。この者たちの生活を守るという観点は当然に必要である。さらにはこれに加えて、人材確保という点も、重視しなければならない。

 信用組合が破綻した場合、理事、監事は道義上、当然、全員退任すべきである。しかしながら、常勤理事の中には、優秀な人が多くいると聞いている。

 バブルという未曾有の異常事態を考えれば、一個人に責任を問うのは辛い側面がある。もちろんそういう異常事態ではあっても、理事長の場合は、組織の最高責任者であるから、これは退任していただくしかないだろう。しかし常勤理事については、優秀な人は、嘱託などの形で、新銀行で働いてもらう道を模索すべきではないだろうか? 限られた人材を有効に活用するには、何らかの工夫が働いてしかるべきである。

 破綻組合の幹部全員を一律に切り捨てるような政策は、妥当ではない。


【銀行設立への青写真・長期的視点から】

人材育成に資金投下
情報専門組織も構築へ

 先に商銀の果たした最大の役割は、ネットワークインフラの提供であったと述べた。将来に於いても、この重要性はいささかも変わるところがない。

 いままでは、無意識に、結果としてネットワークインフラを提供していた、という事ができる。しかしながらこれからは、意識的にネットワークインフラを提供すべく、新たに構築することに力を入れて行かなければならない。先ず、21世紀の望ましい在日像について考えてみる。

 21世紀に於いては、在日という定義自体が古くさいものになるだろう。いま現在もインターネットの普及により、地球が一つの生命体として機能している状況である。そのようなときに、在日というくくり方は、如何にも狭苦しく、旧時代的である。

 ビジネスが世界化しているいま、われわれのネットワークもまた、世界化する必要がある。21世紀のわれわれにとって必要なのは、在日のネットワーク、プラス、在外コリアンのネットワークである。

 ビジネスがアメリカや、中国や、ロシアと行われるとき、そこに信頼できるコリアン事業家が居るならば、その人と取り引きできる情報を提供できるようでなければならない。

 その為にはどうすべきか、以下に掲げる。


情報専門組織を作る

 銀行傘下に、経済研究所を作る必要がある。ここで収集する情報は、各国の投資環境に関する情報。各国にいるコリアン経済人の情報などである。

 このほかに、在日同胞経済人育成のための情報が必要である。すなわち、ベンチャービジネス立ち上げから公開に至るまでの、情報を提供できなければならない。また、財務戦略、公開戦略に必要な情報の提供や、指導が行えなければならない。

 この他に在日が係わっている主立った業種の統計データも必要である。こうした情報は、日本を初め、各国で必要とされるくらいのレベルにまで高め、売ることができるようにする必要がある。また、必要とされるような情報でない限り、意味がないものである、ともいえる。


人材育成

 在外コリアンネットワークを作るには、その中で働く人間のレベルが上がらない限りできないし、また仮に作れたとしても、ネットワークを機能させることはできない。

 最低限、日本語、韓国語はできなければならない。このほかに英語、中国語、ロシア語などができる人材を多数養成する必要がある。すなわち、3カ国語を自由に操れる人間が多数必要、という事である。また、年間5人程度、MBA(経営学修士)に送り出すくらいのことをしなければならない。

 部長職以上に就くには、3カ国語ができること、また、役員以上になるには、MBAを取得していること、等の条件を付し、人材育成に資金を投下しなければならない。

 人材育成については、やる気があるものには等しくチャンスが与えられるシステムを構築する必要がある。出身大学や学歴に関係なく、やる気があり、必要とされる結果を出すものには、更に上を目指すチャンスが与えられなければならない。最終目標は、彼らが作り出すネットワークから得られる情報や、彼らが加工した情報が、コリアンネットワーク以外のものに高く売れるようにすることである。

 韓国と日本は地理的にも近いので、ビジネスをしようと思えば、在日に頼ることなく、直ぐにビジネスをすることができる。

 また、インターネットの発展により、アメリカと韓国であっても、ビジネス情報のやりとりはできる。

 この様なとき必要なのは、情報加工の技術であり、人的な繋がりである。これこそがネットワークの本質をなすものである。

 1世の時代は、学校に行かなくても、文字を知らないものでも、口コミでそれをすることができた。しかし現代にあっては、意識しない限り、そのようなネットワークを作れない状況になっている。

 銀行は、正しくそのようなことを意識して行う、情報インフラの中心に位置しなければならない。

 われわれはこの様なことをするために、儲けるのである。世間一般の会社のように、株主に高配当を出すためや、株主純資産を高めるためだけに、経済活動をするのではないのである。

 われわれの銀行は、先ず、理念ありきの経済主体でなければならない。そして理念を実現させるために優秀な人材を獲得し、育て上げなければならない。


コンサルティングファーム化

 組織と人材を活用して、日本国内でなすべきは、企業の活性化、端的にいうと、コンサルティングである。

 コンサルティング会社が、貸し付けるべき資金まで持っている、という形にしないと、銀行としても生き残れないし、顧客も維持できず、ひいてはネットワークの構築もできないことになってしまう。

 いままでは、パチンコと焼き肉が在日の基幹産業であった。しかし今後は、この産業の比率、比重は相対的に低下するものと予想される。

 その他の産業、例えば、情報関係、ネットワーク関係、物流、環境問題特に産廃産業などの重要性が増してくるだろう。

 そういう多方面の産業に対し、適切なコンサルティングを展開して行くという事は、それぞれの専門分野の人材育成を計らなければならない事を意味する。

 このため、外回りや、貸付関係には、フィナンシャルプランナーや、税理士、中小企業診断士、と言った資格を持った者のみが当たれるようにする必要がある。

 人がわざわざ出向いて預金を集めるからには、単に預金を集めることよりも、人と顔を合わせるという事の方に重きが置かれなければならない。

 こうした観点からすれば、情報処理能力のないものを店舗外に出すわけには行かない。外に出るものほど、高い能力が要求されるのである。

 知っておかなければならないことは山ほどある。それらをマスターし、資格の一つも取ってから、外に出て、初めてお客と対等の話し合いができるのである。

 銀行には、まず、こうしたことが求められる。


【結び】

発起人集会開催急げ
民団で資本金獲得運動展開を

 (1)速やかに、民団が中心となって発起人集会を開くべきである。

 (2)資本金獲得運動を民団の運動として展開すべきである。

(2001.01.01 民団新聞 新年特集)



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