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「在日の夢」担うイレブンたち

21世紀にキックオフ…在日大韓蹴球団



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今春の大統領杯が初陣
固い結束で母国の大舞台へ

 韓国、そして在日同胞にとって古くから特別の思いが抱かれてきたスポーツのサッカー。在日本大韓蹴球協会(宋一烈会長)は昨年12月15日にサッカーの在日同胞常設代表チーム「在日大韓蹴球団」を誕生させた。1958年にサッカーを愛する在日同胞が在日本大韓蹴球協会を結成したが、40年以上も、待ち望まれた代表チームの誕生だ。「朝鮮籍」同胞7人を含む20人で構成したチームは、今年3月に韓国で行われる大統領杯で公式デビューする。


初陣となる今春の大統領杯に臨む在日大韓蹴球団のイレブンら
(昨年11月、静岡県御殿場市での強化合宿チーム


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在日韓国人のサッカー史

 今から約半世紀近く前の1958年。サッカーを愛する在日同胞たちが、全国の同胞サッカー人を結集し、「在日本大韓蹴球協会」を結成した。現在の宋会長は第7代目にあたる。

 1953年秋。母国韓国での国体に、在日同胞選手団が初めて参加した。その参加競技とはわずか一種目。それがまさにサッカーの単独チームだった。

 初めて海外から参加した在日同胞に対し、スタンドを埋めた母国の同胞は大喝采の拍手と歓声を送った。 母国の大舞台に立った在日同胞のイレブンたちは、その感動で涙が止まらなかったという。

 60年代には、「太白クラブ」や「在日オールコリアチーム」を作り、日本の各大学やクラブチームなど強豪と対戦、無敵の強さを誇りながら、後輩たちの育成と日本サッカー界のレベルアップに寄与してきた。

 その後も韓国の国体に毎年、在日同胞代表チームを派遣、国技とも言われる韓国のサッカーにチャレンジしてきた。ところが80年代後半からは、在外同胞どうしによる対抗戦に移行され、いわゆる本戦出場が見送られてしまった。


キャプテンを務める
MFの李根錫
(27・帝京高校出身)

元川崎フロンターレ
の林采根(25・MF)


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日本国内では活動に制限が

 日本国内では国籍の関係で「在日チーム」は地域レベルでのリーグ活動しか認められていない。

 そのため、かつて「最強」と言われてきた朝鮮総連系の常設チーム「在日朝鮮蹴球団」さえも、結局、“上”への道が閉ざされてしまい、「目標」と「活動の場」に限界が生じ、事実上の解散となった。

 また、Jリーグの場合も、日本の高校などを卒業すれば日本人と同じ扱いが与えられる「在日特別枠」があるが、これはわずか一人。

 宋会長は「たった1という数字はゼロと同じ。それならば制限のない韓国に行こうと思い、蹴球団結成の発想に至った」と話す。

 そして「将来は優秀な選手をKリーグやJリーグに排出し、在日同胞の子どもたちにとっても夢を与えるチームに育てたい」と話している。

 今回の代表に選ばれた任泰亨選手(22・埼玉県)も昨年、浦項スティラーズのサテライトに輩出した。

 既に、今回結成した在日大韓蹴球団の中から2人の選手のKリーグ入団が内定している。


昨年、浦項スティラーズに
所属していたFWの任泰亨
(22・朝鮮高校出身)

蹴球団の守護神、GKの朴泰成
(26・武相高校出身)


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同族なら南北の国籍問わず

 このような趣旨で結成に踏み切った在日本大韓蹴球協会は昨年3月からセレクションなどを通じて「蹴球団」作りを進めた。

 4回にわたるセレクションには全国各地から高校生や大学生、社会人など約60人が挑戦した。今回選ばれたのは18歳から31歳までの同胞選手20人。日本の地で生まれ育った同じ同胞という立場から、現役の朝鮮高校生をはじめ、朝鮮大学出身者ら「朝鮮籍」選手7人も受け入れた。

 古くからサッカーが活発だった朝鮮学校の子どもたちにも、同じ夢と希望を与えることになりそうだ。

 大韓蹴球協会からも在日の「朝鮮籍」選手を同じ自国民扱いとして出場資格の了承を得た。


守備の要、
朴康実(26・DF)

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「在日」の存在強くアピール

 結成した蹴球団は今年3月に韓国で行われる大統領杯が公式デビューとなる。日本の天皇杯にあたるものでプロ、アマが一堂に出場する国民的全国サッカー大会だ。

 蹴球団は今後、大統領杯に向け、毎月1回の合宿のほか、3月上旬には韓国入りし、約1カ月間の長期合宿を行うが、専用練習場の提供や、特別コーチ派遣など、韓国Kリーグの数チームから協力の意が伝えられている。

 宋会長は「大統領杯出場は1958年の在日蹴球協会結成以来、大先輩たちの時代からの夢だった」とし、「勝つ事も大事だが初陣では在日同胞の存在を大きくアピールしたい」と胸を膨らませている。

 21世紀にチャレンジするために結集した在日同胞代表のサッカーチーム。サッカー選手をめざす在日同胞の子どもたちに大きな夢と希望を与えられる「ドリームチーム」に育ってほしい。

 そして、来年の2002年ワールドカップ(W杯)が終わった後も、在日大韓蹴球団のチャレンジは永遠に続けられる。


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主な選手の顔ぶれ


李根錫(27・MF)

金 征(23・FW)

任泰亨(22・FW)

林采根(25・MF)

朴泰成(26・GK)

趙晃大(20・MF)

朴康実(26・DF)

崔広史(29・DF)

李正民(25・MF)

鄭賢鎮(22・DF)

李在仁(31・MF)

申斗学(18・FW)

呉龍鎮(19・DF)

池英治(18・MF)

姜淳敬(18・MF)


(2001.0101 民団新聞 新年特集号)



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