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進展するか、南北韓軍事的緊張緩和



2001年、南北関係進展のカギは

 分断後初の南北首脳会談とその成果をまとめた「6・15南北共同宣言」の発表から早くも半年余りになる。今年こそ、「南北共同宣言」の精神に基づき、離散家族再会事業の拡大と制度化、南北国防長官会談の定例化と軍事的緊張緩和措置の推進、南北休戦状態から終戦・平和体制への転換のための「四者会談」(南北+米中)の速やかな再開――などが望まれている。南北間平和定着と相互信頼に立脚した「交流・協力」の南北新時代の実現への鍵を握る金正日・北韓国防委員長のソウル答礼訪問と第2回南北首脳会談の成否が注目される。

(編集委員・朴容正)


□■「共同宣言」の補完■□

◆平和定着と信頼構築に必要

 昨年半年間の南北対話で、北韓側は、南北離散家族の苦痛を少しでも緩和するための再会の拡大・制度化を先送りし、緊張緩和と平和定着のために欠かせない軍事問題の協議についてもこれまで同様きわめて消極的であった。このため、南北和解と平和定着推進意思が、本当に北韓側にはあるのかと韓国側では疑問視する声が依然強い。

 昨年12月の第4回南北長官(閣僚)級会談でも、北韓側は離散家族再会定例化のための面会所設置時期に触れず、離散家族問題を論議する第3回赤十字会談の日程設定に応じなかった。また、軍事的な信頼醸成に不可欠な第2回南北国防長官会談(当初合意では昨年11月中旬開催)の早期開催を拒んだ。

 「南北共同宣言」には韓半島の平和構築と南北和解・交流・協力推進に欠かせない緊張緩和と平和定着問題に関する言及がなかった。その欠落を埋めるために、昨年9月に第1回南北国防長官会談が開かれた。国土分断と「6・25韓国戦争」(50年6月〜53年7月)以来、敵対関係にある双方の軍首脳の会談はこれが初めてだった。「南北共同宣言」の履行を誓い、「軍事的緊張を緩和し、韓半島に恒久的で強固な平和を実現、戦争の脅威を除去することが緊要な問題との理解を同じくし、共同して努力していく」ことを確認した。


◆◇◆◇◆◇
平和協定は南北韓で
「4者会談」再開急がれる

 第2回国防長官会談では、韓国側が前回提案した軍当局間直通電話(ホットライン)の設置、大規模部隊移動と軍事演習の事前通報、軍事演習の相互参観などについて協議し、具体化に向かうことが望まれていた。国防長官会談の定例化に加え、「南北基本合意書」(92年発効)に基づき構成された南北軍事分科委員会(同年3月から8月まで8回開催し南北軍事共同委員会の名簿交換)を再稼働させ、軍事共同委員会の速やかな構成と軍事対話・交流の積極推進なども検討されてしかるべきだろう。

 「南北基本合意書」は、「現在の休戦状態を南北間の堅固な平和状態に転換させるために共同で努力し、このような平和状態が定着するまで、軍事休戦協定を順守する」と明記している。

 「休戦状態」を「堅固な平和状態」に転換するためには、休戦協定に替わる平和協定を南北間で締結しなければならぬ。韓国が、99年8月以降中断されている「四者会談」の再開をめざしていうのは、そのためである。

 休戦協定の当事者である南北および米中による「四者会談」の推進は、南北間平和協定の履行を米中両国が側面支援・保証することにより、韓半島の恒久的平和体制を構築しようとするもの。これは「南北共同宣言」の第1項「統一問題の自主的解決」(南北当事者解決)の原則にも合致する。

 北韓側は、97年12月の「四者会談」初会談の席で平和協定の相手は韓国ではなく米国だと主張して譲らなかった。「韓国は休戦協定の当事者でない」というのがその“根拠”であった。

 だが、「韓国戦争」当時国連軍司令部の統一的指揮下にあった韓国は、米国など他の参戦国と共に法理的に休戦協定の締結当事者である。「韓国は、すべての国連参戦国と共に国連軍総司令官によって代表されるという形で休戦協定締結の当事者になっていた」(金大中アジア太平洋平和財団「金大中 平和統一論」)のである。


◆韓国は休戦協定締結当事者

 だからこそ、北韓もかつては、韓国を休戦協定の当事者として休戦協定に替わる平和協定を南北間で締結することを主張していたのである。たとえば、金日成主席(当時首相)は72年1月、日本の読売新聞記者との会見で、韓半島の緊張を取り除くためには、まず南北間で平和協定を結ぶことが緊要で、その後に駐韓米軍を撤収させればよいと強調している。

 南北は、依然「休戦」という名の下の交戦状態にある。休戦線を挟んで大規模兵力と火力による敵対的対峙が、半世紀も継続している。それに伴う膨大な軍備・兵力の維持負担と軍事的緊張が、南北双方の経済と民生に重圧となっていることは周知の事実である。

 昨年6月の南北首脳会談で、双方は「民族の安全と和解・協力を願うという立場から相当な水準の合意を得ることができた」(金大統領のノーベル平和賞受賞式演説、昨年12月)という。だが、その後、国防長官会談を含め各種南北対話がもたれたにもかかわらず、南北間では軍事的信頼構築の最も初歩的なホットラインすら、まだ設置されていない。

 こうした状況を反映して、韓国の現代リサーチ研究所が昨年12月行った「南北統一に関する世論調査」では「北は赤化統一をあきらめていない」との回答者が八割以上を占め、「統一より南北の平和体制構築がまず求められている」との回答が76%に上った。

 今年こそ、南北間緊張緩和と平和体制構築に向けた協議に着手し、具体的措置が講じらるよう切望されている。


□■「一段高い合意」■□

◆「金大中大統領に借りがある」

 今年の南北関係にとって「核心的な日程」は金正日国防委員長の「ソウル答礼訪問」であり、訪問時期に関心が集まっている。金国防委員長のソウル訪問によって南北首脳の相互訪問が実現し、第2回南北首脳会談の開催で南北関係の進展と平和体制構築へ弾みのつくことが望まれているからである。

 金国防委員長は、昨年6月の平壌での南北首脳会談で、金大中大統領からソウル訪問招請を受けて、「適切な時期」に訪問することを約束した。

 これと関連して韓国の朴在圭統一部長官は6月21日の記者懇談会で「14日の平壌晩餐会で金国防委員長が『共同宣言に言及された事業が順調に推進され、一〜2名がまず南側に行き交流した後に(答礼訪問日として)いつがいいか公表したい』と述べた」と紹介した。


◆◇◆◇
注目される金正日国防委員長のソウル訪問

 その直後の6月30日に在米同胞ジャーナリスト・文明子氏と会見した金国防委員長は、ソウル訪問時期について「五大共同宣言(南北共同宣言)の実践過程を見ながら決めるでしょう」と表明した。また、金国防委員長は8月12日、平壌での韓国マスコミ社長団との昼食会で「私は金大中大統領に借りがあるのでソウルに行かなければならない」と述べ、「適切な時期に訪問する。早くすべきなのだが…。現在この問題は国防委員会と外交部が討論中だ」と説明。同時に「金容淳(労働党)秘書を条件ができればまずソウルに行かせたい」と明らかにした。

 その金容淳秘書(対南担当)は9月11日から14日までソウルおよび慶州・済州を訪問。金大統領と会い金国防委員長の口頭メッセージを伝えた。林東源大統領特別補佐官との会談後に発表された南北共同報道文では、金国防委員長の「近い時期のソウル訪問」と「それに先立っての金永南最高人民会議常任委員長のソウル訪問」が確認された。


◆軍縮なども議題に…望まれる北韓側の積極呼応

 金大統領は「金国防委員長のソウル訪問は来春実現する」と表明している(昨年10月)。韓国側の受け入れ準備や国民の反応をチェックするなど、先行・地均しを兼ねた金常任委員長の訪韓は昨年12月中とみられていたが、結局見送られた。

 韓国側は、昨年12月の平壌での第4回南北長官級会談(12〜16日)で「金国防委員長のソウル訪問」とそのステップになる「金常任委員長のソウル訪問」についても具体的日程を詰めたかったが、できなかったという。南北長官級会談の韓国側首席代表でもある朴在圭統一部長官は、12月8日の国会予算決算委員会での答弁で「金正日国防委員長のソウル答訪以前に『韓国戦争』など過去史問題が話し合われるものと考えられる」と表明していた。

 金大統領は、ノーベル平和賞受賞式参加のためノルウェーを訪問中の12月11日、「来年春に金正日国防委員長がソウルを訪問すると期待している。金国防委員長がソウルに来れば、6月の南北首脳会談の時より一段階高い合意をするだろう」と強調し、注目された。

 その後の聯合ニュースとの会見(12月18日)で金大統領は、「金国防委員長との会談で韓半島の平和定着に向け画期的な進展があるよう努力する。南北間の協力問題をめぐっても一段高い対話ができるだろう」と、ソウルでの第2回南北首脳会談の成功に強い意欲を示した。


◆先送りしてはならぬ

 第2回南北首脳会談では、休戦協定の南北平和協定代替または軍備管理・軍縮など軍事的緊張緩和と信頼構築のための可視的な方案が本格的に論議されるものと期待されている。

 金大統領は、昨年6月、南北首脳会談直後に迎えた「6・25(韓国)戦争50周年記念式典」での演説で、「今後(南北間に)軍事委員会を設置し、緊張緩和や不可侵など、平和のための措置について積極的に協議していく」と国民に約束した。11月には「今後北韓に『四者会談』の再開を提案する。南北平和協定が締結され、韓半島平和体制が定着する過程で、南北韓軍縮問題も論議されるだろう」と南北軍縮について言及している。

 韓国国防部が12月4日に発表した「2000年版国防白書」も「北韓が軍事的信頼構築、軍備制限、軍備縮小を含む南北間軍備統制に応じる場合、能動的に協議、推進していく」と明らかにし、北韓側に対し韓半島の軍事・平和問題の協議を呼びかけている。

 北韓側が、南北の軍事的緊張緩和と平和体制構築のための具体的措置に応じるかどうかに、「金国防委員長ソウル訪問」の成否と新年の南北関係の進展如何がかかっているといえよう。

 南北関係のさらなる進展をめざし相互信頼関係の醸成を重視するならば、北韓は「金国防委員長ソウル訪問」を「先送り」するようなことがあってはならないだろう。

(2001.01.01 民団新聞 新年特集号)



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