民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
21世紀に飛び出せ!コリアン

テクノ・ミュージシャン
董智成さん(25)



◆納得できる音楽模索

 「計算しきれる美学を完璧に自分で作り上げて、それを最後まで完結できる」

 在日韓国人三世のテクノ・ミュージシャン、董智成さん(25)は、音楽作りに対する「自分の美学」を臆することなく語る。

 演奏における肉体のブレや、雑音などを排除できるテクノ。それらの要素は邪魔なものに過ぎない。作品の完成度を追求する。

 「自分の意志のみで作れ、それが音楽に反映するから好き」だと話す。

 98年のデビューから昨年まで名乗っていたアーティスト名は「キメリック・モスキート」。その意味は「幻想上の蚊」だ。いろいろな物から栄養分を吸い取る幻想上の蚊。董さん自身、この2年間で充分すぎるほどの栄養分を吸い上げたという。

 2年間に自身のレーベル、リゾート・レコードからアルバム4枚をリリースした。かなりのハイ・スピードだ。しかし、本人は「春夏秋冬で出すことも可能。イメージはいくらでも湧いてくるけれど、一曲作ると体力と気力が消耗してフラフラになる」という。曲作りは自分だけとの闘いだからこそ、そこに一点集中する。音楽という自己の世界を作り出すために、寸分の妥協も許さない。

 4歳から中学1年生まで嫌々ながらピアノを習った。人の楽譜を弾くことを嫌い、自分で自由に弾いた方がいいと当時から思っていた。中学の時、自分で始めたバンドでドラムをたたいた時にリズムに目覚めた。

 「音楽は続けたい、何か創りたい、表現したいという思いはあったけれど、一体自分は何にむいているのか模索していた」

 その後、リズムマシーンとの出会いが、向かうべき音楽の道へと進ませる。

 毎月50枚位のCDを購入する。そのジャンルも邦楽からクラシック、民族音楽までと幅広いが、どの音楽を聴いても感動したことはないという。

 「人の曲を聴いて納得できたら音楽はやっていないと思う。その人のリスナーになればいいから」。「恋ができないから、恋したいものを自分で創りたい」と想いを語る。

 音楽作りのコンセプトは、場所や時間などを選ばず、聴けば心に余裕が生まれるリゾートテクノ。聴き手自身が心を解き放し、脳の中でイメージした景色を自在に描けるような音楽を目指している。

 新世紀を迎えた今年、5枚目のCDをリリースする。以前のアーティスト名は20世紀で埋没させた。今年から「トウ・チセイ」と、自身の名前をカタカナで名乗る。今後もよりよい音を追求すると同時に、語れるミュージシャンとして、活動の場を広げていきたいと、目を光らせる。そのために実物大の「トウ・チセイ」の登場が不可欠になった。

 「将来は音楽を引っさげて海外に行きたいけれど、段階を踏んで日本を含むアジアから認めてもらいたい」

 自ら語る「音楽職人」は孤軍奮闘を続ける。

(2001.01.01 民団新聞 新年特集号)



この号のインデックスページへBackNumberインデックスページへ


民団に対するお問い合わせはこちらへ