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韓日共同歴史教材作成へ

両国研究者が記述案検討



記述案を検討する
韓日両国の研究者(東京学芸大で)

■2002年度刊行めざす

 21世紀のありうべき高校生向けの韓日共通歴史教科書のたたきだいをつくろうと、両国の学者、研究者が3年越しで討論を重ねている。13日には小金井市の東京学芸大学で第7回シンポジウムを開催、先史時代から現代まで八つのテーマで相互に「案文」を突き合わせながら話し合った。2001年度まであと3回の合同研究会を重ね、2002年度にはその成果を本にして出版することにしている。

 シンポは歴史教育研究会(日本側、加藤章会長)と歴史教科書研究会(韓国側、李在煕会長)の合同主催で97年度から毎年度2回、韓日両国で交互開催している。98年から99年度にかけては韓国側、日本側がそれぞれ自国の教科書を分析したり、教育実践報告を取り上げた。その成果は昨年3月、『日本と韓国の歴史教科書を読む視点』(歴史教育研究会編)と題して刊行した。

 2000年度に入ってからは共同の歴史教材を生み出そうと、韓日関係について双方の歴史認識の溝を確認する具体的な作業に着手してきた。13日の第7回では、先史時代から現代史までを視野に記述案の具体的な検討を行った。双方が具体的な記述案を持ち寄って討論したのは昨年6月のソウルでのシンポに続いて2回目になる。

 韓国の歴史教科書研究会からは鄭在貞ソウル市立大教授ら8人が発表、同じく日本の歴史教育研究会からも岡田敏樹神奈川県立綾瀬高校教諭ら10人が発表に立った。

 韓日間の歴史認識論争で最大の焦点となっている近代史の分野では、韓国併合に至る過程を取り上げた。今回、この問題では双方に大きな記述の差異は見られなかった。

 ただし、韓国側からは「最終的になぜ日本が植民地という形を取ったのか分からない。当時の日本内部の事情について研究があってほしい」との注文がついた。

 これに対して、日本側報告者の岡田敏樹神奈川県立綾瀬高校教諭も「私が満足できる十分な研究はない」と認めたうえで「韓国側の抗日義兵運動を丹念に見ながら、当時の日本の対応を集めて教科書に書いていきたい」と抱負を述べた。

 この後、韓日の教科書にほとんど書かれてこなかった現代史にも言及、韓日条約を共通テーマに双方が韓日会談の経過と内容、解釈、及び現在に至る影響について報告した。このなかで、韓日基本条約の解釈をめぐっては双方に若干の差異が浮き彫りになったが、一つの意見を押しつけず、両論併記が望ましいということで意見の一致をみた。次回第8回は6月ごろソウルで開催する予定。

 日本側の歴史教育研究会で中心的役割を果たしてきた君島和彦東京学芸大学教授は「両国の歴史認識の差を埋めようとは思っていない。溝は溝としてどうしてそういう違いが出るのかについて討論してきた。2001年度までにこれまでの討論の結果をまとめたい。現場の先生のための参考資料になればと思っている」と話している。

(2001.01.17 民団新聞)



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