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慎武宏の韓国サッカーレポート

アジアの虎の鼓動



カールスバーク杯前の
トレーニングをする韓国代表

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ヒディンク体制始動

 韓国はもちろん、日本に住む多くの在日コリアンの家庭で旧正月が賑々しく祝われたと思うが、それはここ九龍でも同じのようだ。

 私は今、香港にいる。韓国と同様、太陰暦での1月1日を元旦とする香港でも新年を祝う華やかで楽しいイベントが目白押しだ。

 とはいえ、その中国的旧正月を満喫するために香港に来たわけではない。目的はサッカー。お目当ては韓国代表が出場するカールズバーグカップだ。


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香港(カ杯)で初采配

 香港サッカー協会が主催する同大会は、アジア、ヨーロッパ、南米からそれぞれ1カ国ずつが参加。これに香港プロ選抜を含めた4チームがトーナメント形式で順位を競う国際大会だが、そのカールズバーグカップで韓国代表は24日にノルウェーと、27日にはパラグアイもしくは香港選抜とテストマッチを行うことになった。それを取材するために、はるばる香港までやって来たのだ。

 韓国代表がカールズバーグカップに参加するのは今回が3度目だが、その注目度はかつてないほど大きい。

 それもそのはず。チームの指揮を執るのはフース・ヒディンク。再起を誓う「アジアの虎」はオランダ出身の世界的名将に2002年W杯の舵取りを託した。香港がその初船出となるのだ。

 そのヒディンクはこのカールズバーグカップ前に行なわれた国内合宿で、韓国代表にさまざまな変化をもたらした。

 「オーガニゼーション(組織力)とコントロール(自己制御)が私のサッカー哲学だ」と語った百戦錬磨の54歳は、外出禁止、服装統一、時間厳守など、徹底したディシプリン(規律)をチームに持ち込んだ。まるで士官学校並の管理方法だが、かといってその振る舞いが高圧的なわけでもない。

 ときにはユーモアも交えるその手法は、選手やマスコミ関係者かも好評を得ている。韓国代表に一体感が戻ったと、もっぱらの評判なのだ。


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4−4−2システムに改造

 ピッチの上でもヒディンク改革は始まっている。これまで韓国代表と言えば、マンマーク守備を基本とする3―5―2システムが主流だったが、ヒディンクは「韓国サッカーに欠けているのは攻守のバランス。そのバランスを図るためにも、選手配置を改造する必要がある」と指摘。ゾーン守備で守る4-4-2システムへの改造に着手した。そして、その際に強調しているのが、やはり「オーガニゼーションとコントロール」。

 特にコントロールについて、ヒディンクは車にたとえてこう語った。「韓国の選手たちは献身的だ。まるで4000〜4500rpmの自動車のようだ。だが、自動車もときには2500rpmで走らなければならないときがある」

 すなわち、韓国の選手たちは労を惜しまないが、かえってその献身さゆえに戦術がおろそかになり、ゲームのリズムも一本調子になりがちだ。試合に勝つには揺るぎないコンセプト、試合のリズムに強弱緩急を付けられる調整力が必要だと、ヒディンクは指摘しているのだ。それは韓国がもっとも不足している点でもある。ヒディンクは早くも韓国の弱点を見抜いてしまったのもかもしれない。

 そんなヒディンクが果して、どんな采配を見せるのか。香港に来ても好奇心を高まるばかりだ。


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豊富な海外遠征と国際試合

 しかも、今年はプレW杯イヤー。韓国代表は数多くの国際マッチを行なう。カールズバーグカップを終えても休む暇もなく、2月8日からはUAEで行なわれる4カ国親善大会(デンマーク、モロッコ、UAE、韓国が参加)に出場。4月、8月、10月には欧州合宿を実施。4月にはギリシャ、8月にはポルトガルとのテストマッチが予定されているのだ。

 さらに5月30日からはコンフェデレーションズ・カップが開幕。ブラジル、フランス、カメルーンといった各大陸王者が参加する大会で、韓国は日本とともにホスト国を務める。9月にはアルゼンチン、11月にはドイツと国内で親善試合を行なう計画もあるというのだ。

 こうした強化日程を通じて、韓国代表はいかなる変貌を遂げていくのだろうか。

 W杯まであと1年5カ月。時間は決して多くなく、不安もないわけではないが、これだけはハッキリしている。ヒディンク新監督を迎えた韓国代表は大きな可能性を秘めている。その可能性が、香港の夜景のように眩しく輝いてくれることを、今は強く期待したい。

(2001.01.24 民団新聞)



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