民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー

無念でならない



 1月26日19時15分頃に起きた東京・JR新大久保駅での出来事が、悲しいニュースとして日本全国のみならず韓国全土にも駆けめぐった。

 韓国からの留学生、李秀賢氏(26)がホームから線路内に転落した男性を助けるために、面識のない日本人カメラマン、関根史郎氏(47)とともに線路に飛び降りたのである。

 「助けなければ」と、とっさにとった行動。人間誰しもが躊躇してしまうことを、自分の危険よりも他人の危険を先に考える勇気を、亡くなった2人は潜在的に持っていたのだろう。

 飛び降りて間もなく、電車は線路で尊い命を救出していることも知らず、新大久保駅に入ってきた。

 そして、ことは起きたのである。落ちた人も助けようとした2人をも電車は飲み込んでしまった…。

 事故の連絡を受けた母国の母親は、出ることのない息子の携帯電話を何回も鳴らした。当然ながら、息子に訪れた惨い現実をそのまま受け止められなかった。

 最愛の息子を亡くした母は、「やっぱりつながりませんでした」と力無くつぶやく。父親は「息子はやっぱりかっこいい。偉い息子だった」と過去形の言葉を発することしかできない。

 そして事故後、李秀賢氏のホームページに勇気ある行動への七万件を超える哀悼のアクセスがあったと聞く。

 この事故のニュースに接し、生きていく中で忘れつつある数多くの大切なものを想起した。それは勇気であり、他人への思いやりというものだった。

 ただ、二人の「勇気ある行動」が、死につながり無念でならない。ご冥福を心からお祈りいたします。(K)

(2001.01.31 民団新聞)



この号のインデックスページへBackNumberインデックスページへ


民団に対するお問い合わせはこちらへ