民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
新大久保駅事故の李秀賢さん追悼式

勇気の行動に哀悼の涙



ニュースを聞いて追悼のために
かけつけた弔問客であふれる会場

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市民らの弔問続々と
森首相も参列、各界人士ら冥福祈る

 ホームから線路に転落した男性を救助しようと線路に降りたところに入ってきた電車にはねられて死亡した日本語学校に通う韓国人留学生・李秀賢さん(26、東京都荒川区)の追悼式が29日、荒川区東日暮里の語学専門学校「赤門会」でしめやかに執り行われた。他人のために自らの命をなげうった李さんの勇気ある行動は、韓日のみならず国境を越えて感動を呼んでいる。

 大勢の弔問客で長蛇の列ができる中、金大中大統領からの弔電も読み上げられた。弔問客は次々と李さんの遺影の前で手を合わせ、無念の死を悼んだ。

 追悼式には森喜朗首相、河野洋平外相、町村信孝文相ら日本の政界と韓国ハンナラ党の朴源弘、崔秉烈の両国会議員らも駆けつけた。また駐日韓国大使館から柳光錫、呉重錫の両公使、金秀東総領事をはじめ民団からも中央本部の具文浩副団長、鄭夢周事務副総長、東京本部役員らが参列、李さんの冥福を祈った。

 28日に執り行われた通夜には、福田康夫官房長官や田中真紀子衆院議員、大塚睦毅JR東日本社長や関係者が参列し、李さんの死を悼んだ。悲報を聞いて釜山から駆けつけた父親の盛大さん(61)と母親の辛閨賛さん(50)は、あまりに突然の出来事に呆然とたたずんだ。祭壇に向かって手を合わせる姿に参列者もかける言葉を失った。

 福田官房長官は憔悴した両親に「痛ましい事故をおわび申し上げます。日韓の親善を築こうとした李さんの死を無駄にしたくありません」と声を掛けた。

 また「いてもたってもいられず焼香に来ました」「すばらしい若者をはぐくんだ韓国に親近感を持った」などニュースを見て、勇気ある行動をとった李さんの冥福を祈りたいと参列した市民も多かった。

 辛さんは「人が困っていると何も考えず飛び込むような性格でした。でも、子どもの悲惨な姿を見ると、やはり悲しい」と声を詰まらせた。盛大さんも「知らない人たちからの弔問に心から感動している。息子を失ったのは耐えられない苦しみだが、日本に留学させたのは後悔していません」と語った。

 李さんは七月に帰国して高麗大学を卒業した後、日本の大学院に進学する予定だった。


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ホームページに追悼メール続々

 李さんが開設していたホームページには「涙が止まらなかった。同じ韓国人としてあなたを誇りに思う」「あなたの代わりに、私たちが韓日両国の友好増進のために務めます」など数万通におよぶ称賛と追悼のメールが寄せられている。


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母校の高麗大追悼碑建立へ

 【ソウル】李さんが在学していた高麗大学は29日、総長主催の緊急会議を開き、李さんの追悼碑の建設と名誉卒業証授与を決めた。


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警視庁が感謝状

 警視庁は28日、李秀賢さんと関根史郎さんに野田健警視総監の感謝状を贈ることを決め、29日に遺族に伝達した。


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金宰淑民団中央本部団長が追悼談話

 民団中央本部の金宰淑団長は29日、東京都新宿区のJR山手線新大久保駅で、線路に転落した男性を助けようとして死亡した韓国人留学生、李秀賢さん(26)の死を悼み、談話文を発表した。談話文全文は次の通り。
■李秀賢さんの死を悼む

 勉学のために韓国から日本に留学していた李秀賢さんが、26日夜、線路に転落した男性を助けようとして電車にはねられ、非業の死を遂げました。

 私たち在日韓国人70万人は、志半ばにして異国で亡くなった前途有望な李さんの死を心から悼むものです。李さんの祖父も強制労働の末、日本で亡くなったという事実に、李さんのご両親の無念は想像にかたくありません。

 他者の危機的状況を見過ごすことができなかった李さんの正義感あふれる勇気ある行動は、私たち韓国人の誇りとして、永遠に心に刻まれるものです。と同時に、同様の痛ましい事故が二度と再発しない措置を講じるよう関係当局に強く訴えたいと思います。

 私たち在日韓国人はこのたびの李さんの犠牲的な死を乗り越え、その献身の遺志が日本および韓国、在日同胞社会で「共生」の実になって生かされるよう故人の霊前に誓うものです。


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金大中大統領が李さんに弔電

 金大中大統領は29日、李さんの遺族に「崇高な犠牲的精神は、韓日両国国民の心の中に永遠に記憶されるだろう。義を大事にする故人の人生は、これからも韓日の友好協力関係の発展とともに長く残るものと確信する」との弔電を送り、故人の勇気ある行動をたたえた。


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勇気たたえ首相表彰。日本政府が決定

 日本政府は29日、李さんと関根さんの勇気ある行動をたたえ、森喜朗首相が弔意を表し、表彰する書状を送ることを決めた。首相の弔意を表す書状は例がないという。

 書状は「人命を重んずる勇気ある行為を心からたたえるとともに、深い弔意を表す」としている。


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事故の経過
あっという間に電車が…(目撃者)

 26日午後7時15分ごろ、東京都新宿区のJR山手線・新大久保の内回りホームで酒に酔った男性が線路に転落。これを見ていた李秀賢さんとカメラマンの関根史郎さん(47、横浜市緑区)の2人が相次いで線路に飛び降り、転落した男性を助けようとしたが間に合わず、3人とも進入してきた電車にはねられ、死亡した。

 ホームにいた目撃者によると、カップ酒を持った男性が線路に落ち、すぐに助けようとした2人がホームから飛び降りたところに電車が滑り込むように入ってきたという。あっという間だったという。

 新大久保駅には、乗客が転落した場合に電車を自動停止させる「転落検知マット」は設置されておらず、また4人の駅員全員は改札業務に追われてホームの状況を把握できていなかった。


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民団中央本部も義援金口座を開設

 民団中央本部では、李さんの犠牲的な行動を追悼するために義援金口座を設けました。勇気ある李さんの行動を記憶するためにも義援金をお寄せ下さい。集まった義援金は李さんのご遺族に伝達します。

▽送金先=東京商銀信用組合恵比寿支店、普通口座52481、民団義捐金 金宰淑

▽募金期間=2月28日まで

(2001.01.31 民団新聞)



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