民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
永住外国への地方参政権

日本各界に意見を聞く
新屋英子さん(役者)



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人命尊重こそ大切
義務果たしている以上当然


▼永住外国人の地方参政権問題をどう考えますか。

 日本に住み、義務を果たしている以上、当然の権利だと思う。しかし、「革新」陣営の人ですら、永住外国人に参政権を与えると日本が悪い方向に向かうとでも思っているふしがある。

 島国の日本には太古からいろんな国の人が入ってきて、文化の交流があって今の日本ができた。それなのに権力者が思い上がって、「日本人は単一民族で、他民族の血がまじっていない」とか、「日本人は優秀な民族」とばかりに世界に向けて優越意識を示す。人間として真の誇りを持てば、そういうことはできないはずなのに…。

 かつては自分も徹底した皇国少女で、今の天皇が生まれた時は、幼稚園の代表でお祝いの踊りを踊ったこともある。戦争中は大坂城で女子軍属だったため、優越意識の固まりだった。しかし、信じて疑わなかった「神風」も吹かず、敗戦によって目が開かれた。


▼被選挙権を含めて賛成ですか。

 選挙権と被選挙権は切っても切り離せないもの。選ばれた人がとんでもない人間だと見極めたら、それを降ろす。選挙公約ではいいことを言い、当選後は義理や人情や派閥に巻き込まれて変質していく議員を見るにつけ、当然優れた在日外国人が候補者として選挙にどんどん出てくることによって、悪い者が淘汰されていくべきだ。そういう時代をつくるのは、民主主義的な政治の在り方として当たり前のこと。それを恐れていたら世の中は進歩しないし、日本は文明国家になれない。在日外国人の選挙権を拒むのは自信がないからだと思う。

 政党間で意見が違うのはいい。しかし、こと人間を大切にする考え方は一致させてほしい。人はみな人なのだから、人権を侵すことは許してはならないという平和理論で私は考えている。戦争が一番人権を損ねるわけだから、そういう愚行を止める力を子どもたちに残していきたい。ひとり芝居でもそう言い続けている。真の民主主義を達成するには時間がかかるが、そのために運動をしなければさらに実現が遅れる。そのことを自分に言い聞かせながら、誇りをもって演じている。


▼女性の立場から日本の政治状況をどうご覧になりますか。

 女性の地位がとても低い。日本の国会議員のうち、女性の占める割合は10%になるかならないかというくらいで、これは世界で125位。市町村議会、県議会では一人の女性議員もいない所もある。これでは人口の半分を占める女性の声を反映できない。女性議員が一番多いというスウェーデンでも40%でしかない。

 被差別部落のおばあちゃんを演じる私のひとり芝居「ヒミコ伝説」を観た南アフリカの女性弁護士は、「いつまた白人がアパルトヘイトを復活させるかどうかわからない。私たち女性がしっかりしなければ」と言っていた。同感だ。

 戦前、私たち女性は選挙権がなかった。男性も税金をいくらか納めていなかったら、選挙権が認められなかった。貧乏人は政治に参加できず、女性は動物と一緒という考え方が、日本を支配していた。

 同様に、在日外国人も日本社会から阻害されてきた。政治が悪くなれば、その悪い面を一身に受ける。社会的弱者である在日外国人がもっと政治に参画したら、本当に人間が必要とするいい政治ができる。

 日本が仕掛けた太平洋戦争によって何千万人も犠牲になった。その人たちの犠牲の上にたって、戦後、女性が選挙権を得た。選挙の棄権は人権を捨てることで、税金を納めながら選挙権がないということは人間として見ていないということ。その不平等を日本人として考えなくてはならない。


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プロフィール

新屋英子(しんや・えいこ)1928年、大阪府生まれ。大阪市立扇町高女卒業。中部軍管区経理部女子軍属。52年、劇団制作座入団。57年、劇団関西芸術座創立。「身世打鈴」などのひとり芝居で全国を巡演。「身世打鈴」は現在1815回の上演を数える。著書に『演じつづけて ひとり芝居「身世打鈴」シンセタリョン』(解放出版社)などがある。

(2001.01.31 民団新聞)



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