民団新聞 MINDAN
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「新しい歴史教科書作る会」の中学用申請本

侵略・加害の事実触れず
国家主義全面に



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同胞歴史学者が分析。問題指摘
市民団体のシンポジウムで

 「新しい歴史教科書をつくる会」(つくる会)が昨年四月、検定に申請した2002年度用中学校社会科教科書「歴史的分野」(発行・産経新聞社、発売・扶桑社)の記述をめぐって、「朝鮮史」を専門とする趙景達・千葉大学教授が27日、都内で開かれた市民団体主催シンポジウムで記述内容について問題点を指摘した。

 シンポジウムは「歴史教科書を読む会」(杉並)など3団体が共催、阿佐ヶ谷区民センターで開いた。東京では昨年4月、教科書採択の権限が都から23区教育委員会に移され、2002年4月から各小中学校で使用される教科書が今年8月までに決まることから企画した。

 検定中の申請図書(白表紙本)は原則として非公開だが、趙さんは独自に入手して分析した。趙さんは自身の娘さんが来年4月から区内の公立中学に進学することから、「つくる会」の申請本教科書に関心を持ったという。

 内容を見ると、「つくる会」の歴史教科書は叙述的で一部物語形式になっているのが特徴だという。序章「歴史を学ぶとは」で「歴史は科学ではない」とフィクションを肯定、神話の長大な紹介にページを割いている。この点、「歴史とは現在から過去への問いかけであり、未来を展望するもの」と考える趙さんの考えとは一線を画している。

 とりわけ趙さんが問題にしたのは、清日・露日戦争から韓国併合に至る近代史に関わる叙述。清日戦争では、「朝鮮半島は日本に絶えず突き付けられている凶器となりかねない位置関係」にあり、「日本が負けていたら、あるいは、中国と同じ運命をたどっていたかも知れない」と日本の韓半島出兵を合理化。韓国併合では「欧米からも支持された合法的な併合」とするなど、植民地支配を肯定する自国民中心的な記述にも批判の目を向けた。

 このほか、関東大震災時の朝鮮人虐殺、皇民化政策、「慰安婦」問題、強制連行などの侵略・加害の事実には一切触れないなど、「問題は山ほどある」という。 趙さんは「この教科書を読む限り、世界のいかなる国とも手を結ばず、日本人一人で生きていこうとしているかのようで暗い気持ちになる」と危機感を表明。来春からは娘さんも「つくる会」の歴史教科書で勉強する可能性もあるだけに、「私の娘は周りの生徒や先生を平静な表情でながめられるだろうか。真っ赤になって首をうなだれるしかない。(そうなれば)たまらない」と述べた。

(2001.01.31 民団新聞)



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