民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
21世紀の民族教育を見つめて

民族学校の現場から<17>



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教師と保護者のスクラム
金正俊(建国幼稚園・PTA会長)

 白頭学院建国学校のPTA役員になって3年が過ぎ去ろうとしている。私自身はずっと日本の学校に通ったが、自分の子供には韓国人として堂々と育ってもらいたいという願いから、建国学校に通わせるため住吉区に引っ越しをして来たのである。

 建国PTAは毎月1回、第一土曜日に幼・小・中・高校の会長団会議、もしくは拡大委員会議を開いている。議題は学校の行事に関連した内容が中心で、民族学校の活性化のために、学校側と役員一同が真剣に話し合い、時には時間を大幅に越えて白熱した激論が飛び交う場面もあり、まさに真剣勝負さながらの雰囲気である。

 いずれにしても、保護者達が建国建国学校は民族学校として我等在日同胞社会にとって、かけがいのない財産であるという気持ちを持って通わせている事を肌で感じ、我が子を民族学校に通わせてよかったというのが素直な気持ちである。

 ところが、在日同胞社会全体を通して見ると、韓国人であるにもかかわらず多くの同胞たちが日本の学校に子女を通わせている。これは一体どうしてなんだろうか?

 たしかに、在日同胞子女のだれもが自由に民族学校に通える条件と環境の中にいるわけではない。その理由の一つには、民族学校そのものが限られた地域にしかなく(大阪・京都・東京にある4校のみ)、また保護者達の経済的な負担もある。二つには、同胞社会の世代の交代によって、民族や祖国に対する愛着の希薄化による帰化者の増加がある。

 そして三つ目には、根強く残っている在日韓国人・朝鮮人に対する差別と偏見から、民族学校に通わせる事へのわずらわしさや、将来に対する不安から日本の学校に通わせているのだろうと思う。

 よくよく考えてみれば、民族教育に接する事なく日本の社会で生活をしている多くの在日同胞にとって、負の面でしかみずからの民族をとらえられないのに、どうして我が子に対して、民族教育や民族学校に通わせようとする考えや行動が生まれるのであろうか。そう思うと、本当に口惜しいというか、何かやり切れない気持ちになる。

 こうした現状を、一体どう打開して行けばよいのだろうか。だれしも、子供の教育に不熱心な親はいないだろうし、ましてや子供が民族的に育つ事を望まない親はいないと思う。したがって、まず我等の母体である韓国政府並びに民団からの民族学校に対する財政的支援の確立、及び民団が組織を上げて民族学校への入学運動に力を注ぐ事が、ぜひとも必要である。一人でも多くの同胞子女が、経済的な負担がなくても民族学校に通えるような環境を整えることが必要ではないだろうか。

 それともう一つ、忘れてはならないのは、家庭における民族教育である。子供達が毎日の家庭生活の中で、食事や会話を通して自然にウリナラの文化や風習に触れ、民族の一員である事を自覚させていく環境作りも重要だと思う。

 日本で生活をしながらも、民族の一員として自覚とほこりを持ち、差別と偏見に負けない堂々とした人間を培っていけるかどうかは、小さい頃から民族文化に接し、同胞と一緒の環境の中で民族教育を受けて来たか否かによって決まって来ると思う。

 白頭学院も、今年5月で創立55周年を迎える。戦後のきびしい混乱期に創設されたいきさつを聞くたびに、今後も教師と保護者達が一丸となって、民族学校と民族教育の発展のために努力していかねばと思うのである。

(2001.02.14 民団新聞)



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