民団新聞 MINDAN
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青年会・歴史伝える運動

キャラバン、愛媛からスタート



全国キャラバンなどを確認した
在日韓国青年会の
第22回定期中央大会

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「自分さがしの旅」…1世から聞き取り

 在日同胞が生きてきた生活史を記録し、後世に残そうと在日韓国青年会(金昌敏中央本部会長)がすすめる「歴史を伝える運動」の全国キャラバン「自分探しの旅」が23日、四国の愛媛県からスタートした。隊員は、地元で1世世代を訪ね、渡日や愛媛に居住するに至った経緯や当時の生活相、各地域で同胞社会が形成されていく過程などをつぶさに聞いて回った。

 青年会が提唱した「歴史を伝える運動」は、在日同胞のルーツを記録し、2世、3世ばかりでなく後世に伝えていこうとする運動。韓半島で生まれ、日本に渡ってきた1世世代が急速に減少するのにともない、青年会の会員の大半が3世で占められるなど在日同胞の若年世代は、1世世代から直接話を聞く機会がなかった。資料による知識としての歴史背景は分かっていても、実体験そのものがないだけに、ともすれば在日同胞としての歴史認識に食い違いが生じる場合も見られることから、1世世代を直接面談し、体験談から歴史を見つめ直そうとするもの。

 キャラバン隊は2チームに分けて実施される。2月23日から10月中旬まで、青年会が存在しない地方を四期に分けて四国、東北、関東・中部、近畿・中国・九州をキャラバン隊が巡回する。また5月からは青年会が存在する地方を巡回し、地方の青年会員と力を合わせながら聞き取り調査を行う。

 調査終了後は、3世、4世以降の世代が在日同胞の1世が歩んできた道が分かるように映像を含めた資料に記録して発刊する計画。


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生々しい炭鉱犠牲者の証言
養豚・古鉄・密造酒…
1世、無からの出発、浮き彫りに

 【愛媛】キャラバン隊がまず最初に訪問したのは愛媛県。今回は金会長自らが隊員として聞き取り調査を開始した。

 民団愛媛県本部から提供された名簿を元に、70歳を越す1世宅を訪問して、聞き取り調査した。

 松山市内の河川敷に、解放直後に四万円で購入した家に住むハルモニ(79)は婦人会幹部も経験したという。解放当時、何もない中で400頭の豚を飼いながら生活する一方で、密造焼酎も手がけたという。違法と知りながらも「死んでも食べるのが先じゃ」「ドロボウ以外は何でもやった」と無から生活の糧を作らなければならなかった状況を話した。また北送が始まって多くが北韓にわたった状況なども語った。

 宇和島で古鉄商を営んでいたハラボジ(79)も、4円で取り引きされていたナマリ一貫が800円に高騰するなど6・25韓国戦争当時の日本の特需の状況を語った。また予讃本線のトンネル工事に従事していた同胞の土木工が工事終了後に住み着いた経緯も明かしてくれた。

 現在は存在しないが、民団今治支部の初代支団長の李基淳さん(81、元民団愛媛県本部団長)は故郷の全南谷城郡で住友鉱山に募集された一行35人の通訳を頼まれて渡日した経過を鮮明に記憶していた。「一番危険な所は朝鮮人ばかりだった」と落盤事故や隣接する炭鉱のガス爆発事故などで多くの同胞が犠牲になっていった事実を証言した。

 愛媛の調査では、解放後、新居浜の住友工場や造船所、鉱山の職を失い、資本を持たない同胞は、多くが養豚業や古鉄商に生計を求めざるを得なかった状況が浮き彫りにされた。

 現在も残る河川敷の同胞宅を訪ねながら金会長は「在日同胞1世のたくましさを見た感がする。でも、そうしなければ生きていけなかった事実が、3世の僕は実体験として感じてこなかった」と、2世、3世こそが聞き取り調査を行う必要性を改めて感じたという。

(2001.02.28 民団新聞)



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