民団新聞 MINDAN
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民団、第54回定期中央委員会

2000年度総括報告(全文)



南北首脳会談の実現によって
大きな転換を見せた

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21世紀の土台構築着手

◆情勢概括◆

南北首脳会談・画期的な共同宣言
在日同胞社会にも感動

 20世紀最後の年である昨年は、わが民族と在日同胞にとって大きな転換をもたらせた意義深い1年でした。

 昨年6月13日、分断55年以来初めて、南北の首脳が席を共にし、「南北共同宣言」を発表しました。

 金大中大統領と金正日国防委員長による首脳会談は、世界で唯一残された韓半島冷戦に終止符を打ち、平和共存という土台のもと、和合と交流を通じて統一をめざしていこうと合意した、画期的な出来事でした。

 全世界が北東アジアの緊張緩和はもちろん、世界平和に寄与していくものと、高く評価し、歓迎しました。

 「南北共同宣言」を具体化させるため、3度にわたる閣僚級会談と国防、経済関係閣僚級会談などを開き、15年ぶりの離散家族再会が3回実現しました。

 祖国解放以後、半世紀にわたって続けてきた対峙を克服し、対立と葛藤の構造を和解と協力関係に転換させ、南北が共同で発展していく道が開かれました。これこそ国際的な冷戦によって民族分裂と同族相残の悲劇に綴られてきた20世紀の歴史に幕を閉じ、21世紀の民族史の新たなページを開く、歴史的な里程標と言えるでしょう。

 「南北首脳会談」は在日同胞社会にも大きな感動と衝撃を与えました。祖国分断の歴史と同様に解放以来今日まで分裂と対立を繰り返してきた同胞社会も、今や和合と交流を土台に、統一を指向するときがやってきました。

 本団は昨年6月15日、金宰淑中央団長名で朝鮮総連中央に「いかなる条件もなしに虚心坦懐」に、対話と交流をしていこうと提議しました。

 これに対し朝鮮総連中央も8月24日に応じ、民団との対話に向けて常設協議機構を設置しようと提議してきました。

 今のところ具体的な対話の進展は見られませんが、「南北共同宣言」を契機に互いに敵対関係をのりこえ、和合のムードがつくられていることは事実であり、全国的に朝鮮総連同胞との交流が活発に展開されています。

 昨年、在日同胞社会ではわが同胞の経済活動を支えてきた信用組合が相次いで破綻するという、深刻な事態が起きました。

 日本社会のバブル経済崩壊と長期不況によって、一世たちが血と汗を流しながらつくってきた信用組合が、民団系、総連系ともに破綻し、同胞中小企業の資金運営に大きな弊害を与えています。

 そればかりでなく、連鎖倒産の危険さえも起きており、きわめて憂慮される事態となっています。

 このような状況が民族金融機関の新しい改革を求めているのです。私たちはいかなる苦難があろうと、この危機を克服し、新しい時代に見あった健全な民族金融機関を育てなければなりません。

 私たちが8年前から展開している地方参政権獲得運動をめぐり、日本政界と社会の動きもかなり複雑な様相を見せています。

 繰り返す日本政界の混迷、朝鮮総連の反対運動などによって、地方参政権の日本国会での立法化が遅れています。さらに私たちの運動に筋の通らぬ理由を掲げながら反対運動を猛烈に展開している朝鮮総連の動きにつけ込んで、日本政界の一部慎重論者と保守派が「国籍条件緩和論」を持ち出し、実質的な立法化推進にブレーキをかけています。

 立法化を目前にしたこの時点で日本政治の混迷とあわせて、新しい障害物が生じている事態を憂慮せざるをえません。

 昨年3月24日、第46回定期中央大会で21世紀の民団を背負うべくして、金宰淑執行部が出帆しました。

 新執行部は以上のとおり、韓半島を中心に歴史的な転換がなされた鼓舞的な情勢と私たちの足もとの在日同胞社会における数々の難しい条件の中で、21世紀を見据え、着実な土台構築をめざした活動を展開してきました。


地方参政権の実現へ継続し
粘り強い要望を展開してきた

◆事業総括◆

初年度の金宰淑執行部
歴史的転換背に着実な活動

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1.地方参政権獲得運動

全国幹部が一丸、立法化へ衆参全議員に陳情

 1999年10月初め、「自・自・公」3党連立政権発足時の合意書に基づき、昨年1月21日に公明、自由党共同で「参政権付与に関する法律案」が提出されました。故小渕総理も金大中大統領の要請を勘案し、立法化を積極的に推進しようとしていましたが、不幸にも4月2日、突然死去され日本政界の混乱によって複雑な事態になりました。

 5月23日、第147回通常国会で衆議院「政治倫理公職選挙法改正特別委員会」において提案説明と質疑が行われましたが、6月2日、衆議院解散により審議未了のまま廃案になりました。

 7月5日、特別国会で公明・保守の2与党が法案を再度提出しましたが、特別国会は閉会となり継続審議に持ち越されました。そして第150回臨時国会で11月15日から法案審議に入り、参考人(民団を代表し辛容祥常任顧問が出席)の事情聴取が2度行われ採決の段階に至りました。

 しかし、与党の一部慎重・反対意見により継続審議となり第151回通常国会に持ち越されました。

 本団が主張し、本国の各界各層、そして日本の理解ある多くの人々が期待していた20世紀中の法案成立が遺憾にも実現されませんでした。法案成立が目前に迫ると朝鮮総連の反対活動も激しくなり、またこれを利用した日本政界の一部慎重論及び反対論者たちの活動が活発になりました。これらは95年、最高裁判所で有権解釈がなされたにもかかわらず、「憲法に違憲している」「参政権は日本国民固有の権利であり、帰化をすべきだ」と、時代錯誤的な理由を上げ、反対活動を激しく展開しました。

 しかし、このような一時的な逆風の中でも全団的に粘り強く展開してきました。北は北海道、岩手、南は岐阜、兵庫、大分、高知など地方幹部らの根気強い努力によって、全国46の自治体(8市22町16村)で民団の意見書が採択されました。これは実に日本全地方自治体の45・18%の議会が採択したものであり、都道府県議会の76・6%、市議会の76・7%が採択をし、日本の人口の73%が支持していると言えます。

 それだけではなく昨年10月4日、全国地方団長と傘下団体長を中心に「立法化要望全国統一陳情活動」を通じて、衆参732人の国会議員に対する陳情活動を展開しました。婦人会も11月8日、37地方本部、125人の幹部が国会議員全員に陳情活動を行いました。

 このように立法化を目前にした時点で足踏みしている状況の中でも全団的な活動は継続されています。


民団、総連両トップの
握手も見られた

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2.朝鮮総連との対話と交流

両トップの握手も
各地で他分野交流進む

 金大中大統領の一貫した対北「包容政策」と大統領の勇断な指導力によって歴史的な南北首脳会談が実現し、南北共同宣言が発表されました。

 韓半島の冷戦構造を平和体制に転換させる画期的な出来事でした。これは同胞社会にも大きな衝撃と契機を呼び起こしました。

 本団はさっそく6月15日、金宰淑中央団長名で朝鮮総連中央に「同胞社会の分裂と対立をのりこえ、同胞社会の統一実現をめざして、相互信頼を土台に、無条件対話しよう」と呼びかけました。

 これに対し朝鮮総連は即答はしませんでしたが8月24日、南昇祐副議長と2人の総連代表が本団中央本部を訪れ、対話しようと提議書を持って来ました。

 本団は即、同意し9月11日、具文浩副団長と朴性祐平和統一推進委員長が回答書を手に総連中央本部を訪問しその意を伝えました。

 本団は在日同胞の現実的な問題と南北統一に向けて、全同胞的な立場で寄与できる、現実的で具体的な方案を実現するために、常設協議機構の中に分科委員会を設置しようと提案しました。

 それだけでなく朝鮮総連との対話が一過性や政治宣伝のイベントにすることなく、持続的で問題解決への誠実な対話でなければならないと明言しました。まことに遺憾ではありますが、朝鮮総連側の事情によって今現在、実質的な対話が行われていません。

 しかし、本団は昨年5月、全国団長会議の場で総連同胞との「非政治的で人道的な交流」はいかなる制約もなく自主的に行うことを決定し、南北首脳会談以後、全国的に活発に展開されています。

 地方本部や支部162の各組織で総連同胞との和合と交流行事が行われ、延べ2万人余りの同胞が参加しました。

 日本の市民祭への共同参加、共同宣言、祝賀会、親睦会、ゴルフコンペ、敬老会など、様々な分野で集いを持ち、同族・同胞としての情愛を呼び覚まし、力を合わせていこうと誓い合いました。

 このように、昨年は南北首脳会談を契機に同胞社会の和合と交流が本格的に進展した年として高く評価すべきでしょう。


民団、韓商、韓信協の
三位一体で銀行化を確認

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3.危機に直面した民族金融機関

2台信組が相次ぎ破綻
三位一体で銀行化へ

 昨年12月16日、韓信協会員の最大信用組合である関西興銀と第二位の東京商銀が、日本金融当局によって破綻処理を受けました。これは同胞社会に大きな衝撃を与え、同胞の経済活動に少なからず影響を及ぼしました。

 中央本部はこのような危機的な状況に対して、緊急談話文を発表し、破綻した信用組合の組合員、幹部らの努力と哀痛の心情を理解しながらも現実を冷静に受けとめ、破綻した組合を救済する全同胞的な新しい民族金融機関を1日も早く設立していこうと訴えました。

 12月19日の緊急執行委員会と三機関合同会議を開き、民族金融機関問題に対処するため、特別委員会を構成し対策を立てることにしました。

 12月25日、民団幹部と韓信協、商工会議所の幹部が合同会議を開き、破綻組合の事業譲渡を受けることのできる新しい金融機関の設立が急がれるという点、韓信協に残っている組合を合併し、統合の自助努力を通じた銀行化に積極参与するという点、そして三位一体になり金融機関設立に努力しようとする共同声明を発表しました。この声明は日本金融当局と本国政府も高く評価しました。

 今年に入り、1月中旬に特別委員会を連続的に開催して協議した結果、まず現存している信用組合の自助努力を通じた合併、統合そして銀行化する方途が現実的ではないのかという意見が集中しました。

 2月13日、大使館で特別委員会の代表が集まる席で崔相龍大使から本国政府の指針に対する説明を受けました。

 全同胞的な単一金融機関設立案を3月まで提出してほしいという点と新しい全同胞的な金融機関設立は、不良債権がなく、資金規模や人事運営計画があり、日本金融当局が認定する方案でなければならず、このような条件が具備されれば本国政府も資金支援の用意があるというものでした。

 2月15日、中央執行委員会では3月末まで韓信協の現存組合の合併、統合そして銀行化努力を支援し、当該組合と民団が組合の経営実態に従い、組合の健全化に努力するという点と、6月4日付で解散に直面している大阪商銀の事業譲渡に対しては、韓信協が鋭意努力するとともに民団も支援するという決定をみました。民団は2、3年前から韓信協会員信組の統廃合を通じた自救策を支持してきましたし、信用組合を土台とした銀行化も支持しました。そして、銀行化のためにはどこまでも民団、韓信協、商工会議所が一致して対処していかなければならないという基本態度は変わりがありません。

 現在、韓信協傘下の現存組合は健全化のために血を流す努力が進行中であり、当該民団同胞もこの努力に対して全力を尽くしています。


東・西2つに分かれて
開催した全国支団長会議

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組織活性化と基礎作業

支団長会議や幹部研修で支部活性化図る

 21世紀の民団のための基礎作業として、実態調査を通じた現況把握と意識調査を通じた団員の要望を把握するため、昨年度の組織活動の柱の一つとして調査事業を展開しました。その結果、団員の実態調査は全国民登録者(約44万6000人)の約5分の2に該当する17万1831人をコンピュータに入力し、意識調査は約3000人を対象に調査し、1325人の回答を得て、その結果を分析した中間報告を提出することができました。

 昨年度の組織方針の中で、支部組織の活性化を重要な事業として提起し、全国の支団長会議を東・西に分けて開催しました。

 その結果、支部に至るまで中央との意思疎通ができただけでなく、支部相互間の連帯を強化し、全国的な一体感と合わせて支部活性化の大きな契機となりました。また、組織幹部の研修なくしては全国的な意思統一と行動統一はありえないという観点から、地方幹部研修を継続推進してきました。その結果、前半期は11地方、1地協で、後半期には19地方本部、1地協で研修活動を展開し、延べ2300余人の幹部が参加しました。

 しかし、一部地方幹部は、研修自体を軽視する傾向にあり、また、年2回以上励行しなければならないにもかかわらず、年1回程度で終える地方本部もあり、全国的に歩調を合わせることを切に要望するものです。


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在日同胞21世紀委員会の設立

未来開拓の政策化へ知的力量を結集
早くも中間報告・提言発表

在日同胞の未来を創る
ための研究も始まった

 21世紀の民団の基礎を築くと出帆した金宰淑団長の公約事項であり、全国的な必要性によって「21世紀委員会」を構成しました。

 特に、情報技術の発達が急激に進展しており、同胞社会に与える影響が日常生活から事業形態、ひいては価値観まで急変しています。のみならず、同胞社会の世代交代が急進展しており、すでに3世が同胞社会の過半数を占めています。

 このような状況で共同体としての民団の存立と今後の方向設定のために、研究と政策的提言をする研究機関が絶対に必要です。今や在日同胞も自分の頭脳で考え、自分の足で行動し、自分の手で自分の未来を開拓していく時代になりました。

 昨年9月9日、在日同胞の各界各層の知的な力を集め、4つの分科委員会(組織、経済、生活、教育文化)と2つの特別分科委員会(IT部会とポスト地方参政権・法的地位部会)を設置し、「21世紀委員会」(代表・金敬得)を発足させました。

 この間、短い期間でしたが、各分科委員会が研究会と会議を重ねながら「中間報告」を提出するほど研究に拍車がかかっています。

 今後、「21世紀委員会」から提出される企画・提言などは幅広く討議され、政策化しなければなりません。今後、「21世紀委員会」の成果的な活動に大きな期待をするものです。

 2000年度は韓半島情勢の歴史的な転換と在日同胞社会の統一に有利な情勢が展開した反面、信用組合の破綻や日本経済の長期不況による困難、そして地方参政権を取り巻く憂慮される情勢へと変わる中で、本団は着実に事業を展開してきました。また、21世紀の民団に向けた準備事業も着手してきました。これらを土台に在日同胞の強靭な努力を結集し、21世紀の民団を力強く開いていかなければなりません。

(2001.03.07 民団新聞)



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