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慎武宏の韓国サッカーレポート

アジアの虎の鼓動
勝利への生命線握る韓国人Jリーガー



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各チーム、韓国選手の実力の高さを認知
強いメンタル面、チームに相乗効果

 いよいよ3月10日からJリーグが開幕する。今年はサッカーくじ「トト(TOTO)」も解禁となり、関係者の間ではJ人気復活の期待が高まっているが、リーグ活性化のためには白熱の優勝争いが不可欠。そして、その優勝を目指して今季も多くのチームが外国人選手を獲得して大幅な戦力補強を行っているのだが、驚かされるのは韓国人選手への期待の大きさだ。

 例えば、柏レイソルの洪明甫、黄善洪、柳想鐵。セレッソ大阪の盧廷潤、尹晶煥、金都根。昨季、あと一歩のところで優勝を逃した2チームは韓国人トリオ結成で悲願のJ初制覇を目指している。低迷するジェフ市原はチームの起爆剤として崔龍洙を獲得した。

 戦う舞台はJ2だが、京都パープルサンガは新進の朴智星&安孝錬、大分トリニータは技巧派・崔文植に浮上のカギを託している。韓国人選手たちは各チームで重要なポジションにあるのだ。

 そもそもJリーグが発足した93年当時、韓国人選手と言えば盧廷潤ただひとりに過ぎなかった。しかも、韓国国内では盧廷潤の日本進出を快く見る人たちが少なく、まだ険悪だった韓日関係もあって「売国奴」だと彼を罵ったという。

 日本も韓国人選手にはさほど注目はしていなかった。発足間もなかったJリーグの関心は、ジーコ、リネカー、リドバルスキーなど、名前だけで観客を呼べるビッグネームに集まっていた。その後もスキラッチ、ブッフバルト、ジョルジーニョ、ストイチコフなど世界的な知名度を誇るスター選手が続々と来日。J外国人市場は実力よりも名前のほうが優先されてきた。

 そんなJ外国人市場で韓国人選手の台頭が目立ちはじめたのは97年頃から。その理由はさまざまである。

 例えば韓国スポーツ界の国際化。国内で一定の成功を収めた選手たちが次なるステップとして「世界」を目標に定めるのは自然の成り行き。衛星放送の普及で世界に目を向けはじめた世論も、選手たちの挑戦心を熱烈に支持した。

 韓国と日本の経済不況が両国サッカー界に変化を促した点も見逃せない。経営が逼迫したKリーグのクラブは主力選手を日本に放出することで得られる移籍金で生き残りを図りたかったし、バブルが崩壊したJリーグもピークを過ぎた外国人選手に大枚を叩けなくなった。

 さらに言えば、その前年に決まった2002年W杯の共同開催も大きい。両国間で歩み寄りへの努力が始まったのだ。

 しかし、ここまで多くの韓国人選手がJリーグで急増したもっとも大きな要因は、海峡を渡ってきた韓国人選手たちの実力の高さに尽きると思う。

 98年にJ2降格争いの危機にあったヴィッセル神戸を救ったのは河錫舟と金度勲だった。99年にJ得点王に輝いたのは黄善洪。短い滞在期間だったものの、高正云、崔成勇、金鉉錫なども強烈な印象を日本のファンに残した。今や韓国人選手の実力の高さは日本でもしっかりと認知されているのだ。

 しかも、彼らがチームにもたらす相乗効果も大きい。真面目で協調性があり、強いメンタル力を持った韓国人選手の存在は、チームに一体感と闘志をもたらす。

 かつて優勝の二文字とは縁遠かったものの洪明甫獲得で失点の少ないチームになったばかりか、強い勝負根性を持ったチームに変貌を遂げ、今やJ屈指の強豪チームになった柏などはそのもっともたる例だ。

 ジェフ市原がそれまでの主力選手を放出してまで崔龍洙の獲得に動いたのも、そうした相乗効果を期待してのことであろう。今まさにJリーグで活躍する韓国人選手たちは、勝利のカギを握る「チームの生命線」なのである。

 そんな韓国人Jリーガーたちの活躍が一層期待されているJリーグ9年目のシーズン。果して、今季はどこが栄光に輝くのだろうか。

 昨年は鹿島アントラーズがリーグ戦、ナビスコカップ、天皇杯を制して史上初の3冠を達成した。その鹿島に対抗するのは柏か、C大阪か。それとも……。

 いずれにしても、今年は優勝カップを掲げる韓国人Jリーガーの姿が見たいものである。そして、彼らに熱い声援を送りたい。

 韓国人Jリーガーの先駆者となった男はかつてこう言っている。「在日同胞がいたことも日本に来た理由のひとつ」

 その言葉に応えるためにも、Jリーグのスタジアムに足を運びたい。



洪明甫

黄善洪

柳想鉄

盧廷潤

金都根

尹晶煥

(2001.03.07 民団新聞)



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