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壬辰倭乱で連行された薩摩焼の陶工

演劇「火計り」、歴史の宿命を舞台で表現



右から韓日の演出家、孫さんと
村田元史さんを交えての練習風景

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火計り〜400年の肖像、韓日の劇団が共同製作

 400年前の壬辰倭乱(文禄・慶長の役)時に鹿児島の藩主・島津義弘によって韓半島から連行された韓国人陶工たち。彼らが居を構えた鹿児島県東市来町美山を舞台に、古い窯元の家族を描いた作品「火計(ばか)り〜400年の肖像」が、韓国の劇団・美醜と日本の昴の共同制作によって9日から25日まで、東京文京区の三百人劇場で上演される。同作品は、400年の時を経て、両国の演劇人たちが歴史や現実を踏まえたうえで、互いに反発しながらも共通項を見い出しながら、今後、よりよい韓日関係を築けるようにとの思いが込められている。

 韓国人陶工たちが興した薩摩焼は、永い年月を経ながらも連綿と受け継がれてきた技術と風格、そして色あせることのない輝きを放っている。陶工たちが祖国を離れる際、土と釉薬を持参したが、「窯の火ばかりが日本のもの」という意味で命名された名器「火計り」はあまりにも有名だ。

 同劇は、実際にあった歴史を背景に、美山で3代続く伊勢窯という窯元を設定し、祖父や父の生き方、そして韓国人陶工の末裔で15代目の主人公・伊勢和人が歴史的な宿命を背負った自分の過去を知ることで、自身の進む道を見いだしていく過程をフィクションで仕立てた現代劇。


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末裔の葛藤浮き彫りに
9日から東京「三百人劇場」で

 70年代後半から韓国の劇団関係者らと交流を深めてきた昴は、15年以上前に今回共同制作を行った美醜創立者で演出家の孫ジンチェクさんと出会った。

 現代演劇協会事務局長の杉本了三さんは、「国際交流でお互いの国を往来し、次の段階は一緒に何かをやってみようと思っていた」と話す。

 今回、舞台化した裏には、98年同地で開催された「薩摩焼400年祭」と、14代・沈寿官さんについて綴った故司馬遼太郎さんの「故郷忘じ難く候」を杉本さんが読んでいた経緯がある。「両国の劇団が無理なく自然に双方の俳優が登場する話を探していた」時に、一つの素材と考えていた。

 共同制作の話が具体化したのは昨年から。演出から配役に至るまで、韓日両劇団のスタッフキャストで進められた。また、美山を訪れ地元での取材も行ったという。制作に当たって意見の相違もあった。例えば、日本の作家が史実を重視する一方、韓国側は現実からもっと想像を膨らませてストーリーを面白くしようというやり取りなどがあったという。

 ここでは歴史は述べていない。そこで生きた人たちがどういう考えを持ち、何に向かって目指してきたのか、異国の地に住まわされた者の末裔としての葛藤を通して「人間の真実」を浮き彫りにする。

 見どころ一つは、村祭りの夜、薩摩焼の源流である韓国の古い井戸茶碗を再生させようと、同地を訪れていた韓国の大学院生・金芙美と和人が韓国の「壇君」を祭っている神社で、民族衣装をまとい、現実の世界に舞い降りてきた祖先の陶工たちに出会う場面だ。

 ここで初めて和人は、祖先が何であったか、何をしていたかということを知る。歴史的な宿命を背負った自分の過去を知ることで、美山で焼き物をすることが自分の宿命ではないかと予感させるところで物語りが終わる。

 同劇では、過去を背負った若い男女を通し、将来の韓日関係の在り方の必要性を示唆している。杉本さんは「韓日は長い歴史を持って接しているということを、改めて知る機会になれば」と話す。

 「火計り…」は今年9月にソウル公演を予定している。一般4900円、高校生以下2500円、男女ペアチケット9200円。 問い合わせは、劇団昴・三百人劇場(03-3944-5451)。

 関西公演は27日、ピッコロシアター午後6時半。一般4000円、中高生2500円。チケットおよび問い合わせは、同シアター(06-6426-1940)。

(2001.03.07 民団新聞)



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