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在日へのメッセージ

南北首脳会談の果実は?
石高健次(朝日放送報道プロデューサー)



 3月7日の米韓首脳会談でブッシュ大統領が金正日総書記に対する「懐疑心」や国家の「不透明性」を強調し、金大中大統領の太陽政策の具体的な中身に疑問を呈した格好になった。

 これに対して北朝鮮は、米政府への徹底した非難を繰り返し、13日に予定されていた南北閣僚級会談を直前になって中止通告した。

 あの南北和解ムードはどこへ行ってしまったのだろう、太陽政策はどうなるのだろうと考えていた矢先、こんな話が舞い込んできた。連合通信と朝鮮日報が伝えたものだ。

 ユ・テジュンという亡命男性(33)が中国で昨年6月北当局に捕まり連れ戻され、今年初め「南へ行って来た民族反逆者」として公開処刑された。

 やはり亡命者である母親は、実は昨年10月に息子の失踪を知り捜索願を出そうとしたら、当局から止められたうえ、マスコミには喋るなと厳しく言われた。「韓国籍を取得した公民の命を(こうまで)軽く扱うのか」と憤りを露わにし、さらに自分自身も韓国当局から監視されていると語った。

 朝鮮日報は「ユ氏が連行されたことを国家情報院が10月に確認しながら何の措置も取らなかった」と報じている。

 この記事に、私の中で黄長ヨウ元書記に関して聞いていた話がダブった。彼は亡命後、韓国各地で講演し北の脅威を訴えてきた。日韓で著作も出した。が、私の親しい日本人ジャーナリストは、「身辺警護の目的もあろうが、最近、発言や行動の自由が押さえられ、まるで軟禁されているようだ」と語ったのだ。

 太陽政策の是非を私は言うつもりはない。が、離散家族再会の進み具合を見れば、なおのこと、金大中政権は、「そこまで北朝鮮に気を遣う必要があるのだろうか」と疑問を持ってしまう。それとも、今年上半期といわれる金正日総書記訪韓は、何にも増して重要だというのだろうか。

 あの南北首脳会談がどんな果実をもたらしているのか、冷静な点検が今こそ必要なのではないか。

(2001.03.28 民団新聞)



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