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2年目迎える介護保険への対応を



 介護保険が始まって一年が経ちます。行政に頼る介護から、利用者が事業者を選ぶ介護に転換し、利用者が求める介護サービスの充実に期待が寄せられていました。

 しかし、現実には、日本政府の仕組みの変更などによって、介護保険の運営に責任を持つ全国の市町村の対応にも若干の混乱が見られるのも事実です。これによって、介護保険に対する評価も市町村間で格差が拡がりつつあります。


■同胞の生活実態に照らして

 首長をはじめ役所の役職員が一体となり、中には住民をも交えて取り組んでいる市町村では充実したサービスを提供しています。ですが、そうでない市町村では「介護保険導入によって以前より悪くなった」と評価を下げています。

 専門家は主な問題点として、要介護の認定と在宅サービスの不備を挙げています。要介護の二次判定は市町村の役割が大きく、うまく運営しているところとそうでないところの格差を指摘しています。また、行政、民間事業者、住民がそれぞれ果たす役割を決めて細かく分析し、対応している市町村は在宅サービスの利用度も高いと指摘しています。

 介護保険制度のサービスの利用には国籍条項はありませんが、介護保険がスタートした昨年、民団は、今のところ在日同胞高齢者の生活実態やニーズを必ずしも反映したものとなっていないと指摘しました。また、様々な不利益が現実のものとなりつつあるとも指摘しました。

 このことが一年経った今日、在日同胞社会だけでなく、日本社会全体の介護保険の問題として指摘されています。

 日本の行政も、今後は高齢者の生活実態やニーズを反映したサービス提供へと改善してゆくものと思います。だからこそ、時代を先取りして、在日同胞高齢者が望む民族的なニーズに対応できる介護保険の総合窓口が設置されなければなりません。


■民族的ニーズに総合窓口も

 この窓口は、役所に対する不安感が根強い一世と、介護保険の運営責任を持つ市町村との架け橋的な役割を担うものでなければなりません。窓口は、行政サイド、民団サイドのどちらが設置しても構いません。要は、日本の中で過酷な生活を強いられてきた在日同胞の一世が、せめて残された余生を少しでも豊かに過ごしてくれるように手を差し伸べてあげることです。

 介護保険が充実している市町村の特徴として、ケアマネジャー(介護支援専門員)とホームヘルパーの連携が挙げられています。特にケアマネジャーは利用者の状況を的確に把握し、介護計画を策定しますので大きな役割を担っていると言えます。

 このような状況を勘案すると、在日同胞一世の思いが理解でき、韓国語が可能なケアマネジャーとホームヘルパーの育成が急がれるでしょう。そして、在日一世が気楽に介護サービスなどを相談できる体制が望まれます。

 すでに、民族的なニーズにこたえようと、行政当局に粘り強く訴え、公的補助金を受けて支部会館の有効活用としてデイサービスを始めた大阪・泉北支部やNPO法人を取得し公的補助金を得ている老人会も存在しています。

 今求められるのは、介護保険の趣旨である、社会全体で支え合うという共同連帯をわれわれ在日同胞社会自らが築き上げることです。会館を持ち、同胞同士のネットワークを抱える民団の積極的な対応が問われています。

(2001.03.28 民団新聞)



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