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在日大韓蹴球団、大統領杯に初出場

強豪相手に互角の戦い



闘志あふれるプレーを見せた
在日大韓蹴球団

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母国の大舞台でデビュー
4得点、在日の意地見せる
3連敗したが「可能性」実感

 【ソウル】在日同胞の常設サッカー代表チーム「在日大韓蹴球団」(昨年12月結成)が16日からソウル市の孝昌運動場、光明市の福祉会館運動場などで行われた第49回韓国大統領杯サッカー大会に初出場した。予選リーグ三試合はいずれも敗れ予選敗退した。初出場初勝利の夢は叶わなかったものの、「プロ予備軍」といわれる大学生チーム相手に接戦を展開、互角に渡り合い、母国の地で堂々のデビューを果たし、「初めの大きな一歩」を踏み出した。(写真と文・鄭真一)

 在日大韓蹴球団一行は11日に韓国入りし16日まで、韓国プロサッカーチームである「全南ドラゴンズ」の合宿所(全羅南道光明市)で最終的な強化合宿を行い、本番に臨んだ。

 大統領杯サッカーへの在日同胞チームが出場するのは在日本大韓蹴球協会(宋一烈会長)が1958年に結成されて以来初めて。


在日大韓蹴球団は粘り強い
サッカーで相手を脅かした

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強豪ぞろいの9組で善戦

 在日大韓蹴球団の入った予選リーグ九組は昨年度国体優勝の亜州大をはじめ、過去数度の優勝経験を持つ建国大、弘益大などいずれも強豪ぞろいのブロック。

 17日、歴史的なデビュー戦で亜州大と対戦、大健闘したものの、2―3で惜敗した。

 前半、初出場の緊張からか動きが固く2失点を許した。しかし、後半は山本裕司監督がめざす「粘り強いサッカー」を徹底。組織プレーでチャンスをつかみ始めた。

 3点差に引き離されたあとDF朴康実選手(27)=会社員=がペナルティキックで初得点してから追い上げを見せ、終盤にもFW丁明秀選手(21)=東京朝鮮高OB=がゴールを決め1点差まで詰め寄った。その後も果敢な攻撃を続けたが、あと一歩のところでタイムアップ。3失点を挽回することはできなかった。

 19日に行われた建国大との第二戦はFW池承臣選手(21)=中京大2年=のゴールで先制。しかし、「勝てる」と油断が出たのかミスを連発、不運なPKの判定などもあり3点を失った。終盤、怒濤の攻撃を見せフリーキックからのこぼれ球を丁明秀が押し込み、1点差まで追い上げたが結局初戦と同じ2―3で惜敗した。この時点で在日大韓蹴球団の予選敗退が決まった。

 山本裕司監督が「残り一試合、在日の代表としてのプライドを見せたい」と初勝利への意欲を見せた弘益大との最終戦(22日)だったが、体力の差やアウエーとも言うべき審判の判定にも泣かされ、PKを含む0―5で大敗した。

 3連敗したとはいえ、初出場の在日大韓蹴球団にとっては強豪の亜州大、建国大に1点差まで詰めより、相手を脅かす健闘を見せた。それでもチーム関係者や選手たちは「負けは負け」と現実を謙虚に受け止めている。


建国大戦で先制ゴールを決めた
池承臣選手

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直前合宿で大きな効果

 在日本大韓蹴球協会が蹴球団結成に向け選手集めを始めたのは昨年春から。高校生をはじめ大学生や社会人など、10代から30代と幅広い年齢層が入ってきた。朝鮮籍にも門戸を開き、今回の選手団19人のうち朝鮮籍が8人含まれている。

 メンバーは九州、関西、中北、関東、東北など全国に散住していることもあり、チームとしての練習は毎月1回、静岡県御殿場市で行う2日間の合宿だけだった。山本監督も言うように充分なチーム練習ができないまま韓国入りした。

 しかし、本番一週間前に韓国で行った直前合宿で大きな効果が表れた。韓国入りしてから「在日代表としてここで戦うんだ」と、選手一人ひとりのモチベーションも高まり、チームとしてのまとまりができた。

 結成準備から主将を務めてきた李根錫選手(27)=帝京高校OB・自営業=は「母国の大舞台でプレーできたことは最高の思い出」としながらも、「善戦とは言え負けは負け。正直言って練習が少なかった。ただ、もっと練習をすれば勝てるという可能性をみんなが実感したはず」と話していた。


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本国サッカー界に大きくアピール

 在日本大韓蹴球協会の宋一烈会長は「(在日同胞代表チームとして)まだ始まったばかり。可能性は充分見えた。来年はさらに強いチームに仕上げ、上をめざしたい」と早くも新チーム作りに意気込んでいた。

 初めの一歩を踏み出したばかりの在日大韓蹴球団は強豪相手に善戦を見せたこともあり、その存在は韓国サッカー界にも大きくアピールした。大韓蹴球協会(KFA)関係者から、プロチーム(Kリーグ)も参加する「FAカップ」への出場を打診されたこともその一例だ。


チーム2得点の活躍を見せた
東京朝鮮高校出身の丁明秀選手

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「晴れ姿に感動」
蹴球団後援会員がスタンドで大声援

 大統領杯初出場の歴史的な試合を応援しようと、チームをサポートする在日大韓蹴球団・後援会(丁海龍会長)の会員ら約30人で構成する参観団(康徳洪団長)がスタンドの一角を埋め、熱心に声援を送った。

 得点のチャンスに「それ行け!」「よしそこだ!」と、声を枯らしながら大声援を送った。

 試合終了後、悲願の勝利を見ることはできなかったものの、善戦した選手たちを「立派立派」「よく戦った」と、大きな拍手で迎えた。

 康団長は「母国の大舞台で熱心にプレーする在日選手たちの姿に感動した。選手たちにとっても大きな体験になったはず。チーム強化へさらに物心両面で支援していきたい」と話し、最終戦を終えたあとに行われた選手との食事会で激励金を伝達した。

(2001.03.28 民団新聞)



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