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「在日」の地域社会貢献に道筋を



 私たち在日同胞をはじめとして様々な国籍を持つ在日外国人の声を施策に反映しようとする自治体が、全国各地で着実に広がりつつあります。その先駆けとなったのが96年12月に市長の諮問機関として条例で設置された「川崎市外国人市民代表者会議」でした。その後、東京都、神奈川県、京都市、静岡市、箕面市などにも波及、今年度からは広島市でも設置に向けた準備が進んでいます。


■全国13自治体で「外国人会議」

 このほか、大阪には「外国人市民代表者会議」が設置される以前から外国人と日本人で構成する「有識者会議」が機能しています。これらを合わせれば、なんらかの形で外国籍住民の市政参加を保障しようとする取り組みは、少なくとも全国13自治体を数えることになります。

 このように自治体レベルで広がる外国籍住民に対する市政参加の保障は、数世代にわたって日本に定住し、納税などの市民的義務もきちんと果たしていながら住民自治への参加を認めてこなかった国に対する遠回しな批判ともいえるのではないでしょうか。自治体からすれば、外国籍住民も一緒に街づくりを担う仲間なのです。その多様な歴史、文化、社会的背景を市政にありのままに受け入れれば、地域の活性化にも役立つからです。いわば国が制度的な措置をとらないために打ち出した「次善の策」ともいえるでしょう。

 自治体は多様な外国籍住民を隣人として迎え入れる立場にあります。増え続ける外国籍人口に対応して、いやがおうでも国籍や民族、生まれ育った文化的背景の異なる多くの人たちが同じ地域に共に暮らせる社会、すなわち「多民族・多文化共生社会」の実現を図る立場に置かれています。施策にしても現実的、かつ柔軟なものにならざるをえないのです。


■国に求められる柔軟な発想

 これに対して、国には「外国人は少数で例外」という発想がいまだに根強く残っているように思えます。永住外国人に対する地方選挙権付与方案にしてもしかり。反対派は「国民固有の権利だから日本国籍を取得するのが筋」だと主張します。現実に日本国籍取得の条件を緩和しようという論議も進んでいます。しかし、永住外国人への地方選挙権付与法案を無視しての日本国籍取得条件の緩和であれば、とうてい受け入れられるものではありません。ここには、外国人は制度のなかで管理しなければならないという、これまでと変わらない狭あいな政治的な意図が感じられるからです。

 川崎市は、全国に先駆けて外国人市民代表者会議を設置することで、人権先進都市としての評価を高めました。永住外国人に対する地方選挙権法案にしても、実現すれば日本の未来のために発展につながっても、不利益になるものではないことを知るべきです。

 川崎市の高橋市長は、外国人市民代表者会議の発足にあたって「地域社会の構成員である外国人市民が話し合う問題は、日本人社会の姿を映し出す鏡のような役割を果たしている」と語ったことがあります。日本という国も、外国人にとって住みやすい国であれば日本人にとっても住みやすい国になるはずです。

 地方自治体レベルで外国人住民の声を行政に反映しようという動きは、今後も増え続けることでしょう。国は、こうした動きを、永住外国人への地方選挙権付与法案の早期実現を求める声なき声として謙虚に受け止めてほしいものです。

(2001.04.04 民団新聞)



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