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「帰化必要ない」が7割

2000年度在日韓国人意識調査中間報告(抜粋)



生活便宜や集いの場を民団に期待
ルーツ確認が民族意識に
若手世代同胞史に興味示す

 民団中央本部が昨年10月から1カ月間にわたって行った、在日韓国人意識調査の中間報告書がこのほど発表された。意識調査サンプリング(対象者選定)は15歳代から64歳までの2924人を無作為に選定。このうち1295人(男性817人、女性478人)から回答があった。(※文中の世代は、回答者が持つ世代意識)


■生活・社会関係

▼就業形態

 在日同胞の就業形態では経営者・役員の割合(18.5%)が、日本の労働力人口のものより(約4%)4倍以上多い。また、一般従業員の割合(23.5%)は、日本の場合(約40%)の約半数程度。


▼本名使用

 日本社会で生活していく上で約半数が通名(日本名)使用で生活し、本名(民族名)使用は13.4%、両用(状況によって使い分け)が35.6%となった。

 本名だけで生活している人は少数派にすぎないことがわかる。(1994年の「在日韓国人青年意識」では12.4%、97年「在日韓国人社会成層と社会意識全国調査」では11%)。

 ただ、若年になるにつれて「韓国名だけを使っている」人の割合が逓減しているわけではない。「両用」の割合は若年になるにつれて逓減しているが、逆に「ほとんど通名だけを使っている」は逓増している。これは、「両用派」から「本名」か「通名」かに二分化する傾向へと変わりつつあることを示すものだ。

 また、本名使用者の割合では、専門職、高学歴、高収入者が多い。


▼言語使用

 日常会話について、韓国語使用可能では1世が56.5%、1.5世が23.4%、2.5世(22.2%)、3世は7.5%、と世代が若くなるにつれ少なくなる。

 韓国語学習についても「韓国語を学んだことがある」には、民族団体・民族組織(24.5%)での学習が最も多いが、4分の1近くの人は韓国語を学んだことがない。特に20歳以下では半数以上(51.6%)が学んだことがないと答えている。しかも、テレビやラジオを利用するといった、自助努力が必要とされる方法での韓国語学習者数は少ない。

 韓国語の会話能力についても、やはり若い世代の「まったくわからない」という数値が非常に高い。24歳以下になると「こみいった議論ができる」割合が激減。15歳〜19歳の年齢層では、ゼロという数値となった。


▼家庭内民族行事

 家庭内での伝統文化の継承では、「法事(チェサ)」が最も高い回答率を上げており、民族的行事が世代を経るごとにすたれていくわけではないことを示した。

 チェサが高い割合を示しているのは、不定期な他の行事に比べて、年中行事として「定着」していることがあげられそうだ。


▼交友関係

 交友関係では48.9%が「日本人のほうが多い」と答えている。年代別に見ていくと、若くなればなるほど日本人中心の交友関係になっている。


▼母国とのかかわり

 「韓国に住んでいる親戚・友人・知人との交流」では、38.2%がないと答えている。ただ、過去10年間に7割以上が韓国を訪問しており、一方で4分の1近くの人が韓国を訪れたことがないと答えている。

 年代別では15〜19歳の4人に1人は過去10年間に「6〜10回」韓国を訪問している。

 訪韓の目的は、「観光」が一番高く49.7%。在日固有の訪問目的である「親族訪問」(40.5%)や「墓参」(34.9%」も高い割合を示している。


■民族意識

▼「民族」への感度

 「民族」という言葉にポジティブな感情を持っている人が合計で約6割いる。「民族」という言葉には何らかの情動的な感度が働いている。ただ、女性のほうが男性よりもネガティブな感情がやや高い。

 世代別での無関心・無感動は、1世では8%、1.5世になると約19%、2世約26%、2.5世約32%、3世約42%、4世以降が約59%と増えていく。


▼「民族」を意識する時

 どのようなときに「民族」を意識しているかについては、常に顕在化しているのではなく、あることがきっかけとなって表面化する傾向が高い。

 1位は「韓国や韓半島のことが報道されるとき」(56.6%)。次いで「伝統的な生活様式にふれたとき」(44.8%)、「スポーツ観戦」(41.0%)、「差別を経験したとき」(40.8%)の順。


▼W杯で応援する国

 2002年ワールドカップ(W杯)で韓日どちらを応援するかについては、韓国を応援する(42.1%)と両国(41.6%)がほぼ同数となった。

 日本だけを応援するのは11.3%にすぎず、その内訳は男性(9.0%)よりも女性(14.3%)の方が高い。

 1世から2.5世までは韓国応援が多いが、3世以降になるとその比率が逆転し、日本だけを応援する割合の方が若干高くなる。4世以降では、圧倒的多数を占めている。

 ただし、3世以降ではスポーツ観戦は自分の「民族」を意識すると答えた割合が、他の世代層より低く、スポーツ観戦での自国応援が「民族」意識とは無関係と考えている傾向がある。


▼歴史意識

 自分の歴史やルーツを知ることが、在日の「歴史意識」ならびに「民族意識」に影響を与えていることが現れた。

 「韓半島の歴史と在日同胞の歴史のどちらに興味がありますか」には、「両方」が55.7%と半数を超えている。また、女性は在日同胞史に興味を深めていることも現れた。

 1961年以降生まれ(40歳)を境にどちらの歴史にも興味がないとの割合が2割近くを数えている。

 世代別では、1〜2世は「韓半島の歴史への興味」の割合が高いが、2.5世以降ではその割合が逆転している。世代が若くなるにつれて歴史離れが進んでいるものの、在日同胞史の関心が比較的高いことが現れた。


■アイデンティティ

 「在日韓国人として生まれたことに肯定的か」には、通名使用者(29.1%)は本名使用者(53.1%)に比べて否定的にとらえているようだ。

 また、家庭内で韓国語にふれた経験がある場合、「韓国人として生まれたこと」を肯定する割合が大きい。家庭で韓国語にふれた経験がない人の場合「在日韓国人として生まれたことを否定」する割合が相対的に高くなっている。


■帰化への意思

 日本国籍取得について、希望する者が全体の24.9%(ぜひ取得したい6.3%、できれば取得したい18.6%)と4人に1人が帰化の意思を持っているが、「取得しない」は43.6%(あまり取得したいと思わない22.6%、まったく取得したくない29.1%)と約半数を占めており、「どちらとも言えない」と合わせると日本国籍を取得しなくてよいと考えている者が7割を占めた。

 また、帰化希望者の傾向として(1)若い世代で通名を日常的に使用している者(73.3%)(3)「民族」や「在日韓国人としての自分自身」には否定的、などが占めている。


▼帰化の理由

 帰化を希望すると答えた331人の理由として「生まれ育ちが日本だから」(60.2%)、「子どものために」(51.7%)、「仕事または生活の必要上」(46.2%)の3つが占めている。

 「民族」という言葉のイメージに関しては3割弱が肯定派であり、否定派は2割弱。これは「民族」への嫌悪や否定が帰化希望ではないことを示している。


▼帰化しない理由

 一方、帰化しないと答えた人の理由では、「韓国人・朝鮮人として生まれたから」(25%)、「必要性を感じないから」(24.4%)、「民族としての誇りがあるから」(19.3%)が中心。


■民団の存在度

 「民団は在日同胞の生活向上に役立っているか」との質問に対して、「とてもそう思う」「ややそう思う」が合わせて64.4%と肯定的だ。一方で「あまりそう思わない」が27.8%もいることがわかった。

 「在日同胞の心のよりどころになっている」では、「とてもそう思う」「ややそう思う」が合わせて48.9%と五割を割り込んでいる。

 また、「在日同胞一般の意見が反映されている」では否定(49.1%)が肯定(41.4%)を上回った。


■民団への望み

 民団に何を望むかについては「社会的地位向上への取り組み」(53.2%)「韓国語を学べる場」(40.8%)「南北統一に向けた貢献」(40%)の順。

 男女別を見ると、男性では「社会的地位向上への取り組み」「南北統一に向けた貢献」「行政サービス手続きの仲介」など、生活・地位に対する要望が高いが、女性では「韓国語を学べる場」「同胞と楽しく出会える場」など、集う場を求めている。

(2001.04.04 民団新聞)



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