1世のしたたかさ、と言うより逆境に対する強さを改めて思い知らされた。
青年会がスタートさせた「歴史を伝える運動」で聞き取り調査を行うキャラバン隊は今、北海道、東北を巡回している。
解放前の強制連行や徴用による過酷な炭鉱労働、日本官憲のあからさまな差別と暴力。証言する側の目が真剣だ。何より、体験者の口からほとばしる無念さに、口を挟む余地もない。
解放の話に進むと、一転して表情から堅さが取れるのが分かる。解放の喜びは迎えたが、食べていく道は何も無いのである。道はヤミ米、密造酒、ボロ買いとお決まりの業種である。
少し儲けてスクラップや養豚に進んだ同胞もいる。一般的にあまり知られていない業種もあった。荷粉(にご)と呼ばれる商売だ。荷後とも書くらしい。石炭を積んできた船倉を掃除しながらかき集めた石炭くずを売るのだという。
「沈船(ちんせん)」もある。沈没した船を引き揚げて、鉄くずとして売るのだ。戦争が終わった直後らしい仕事だ。小さな漁船は比較的早く引き揚げられたために儲けが出たらしい。
四百頭の豚を飼っていたというハルモニは「死んでも、食べる方が先じゃ」と笑いながら語った。なんだか分かったような分からない言葉だが、その迫力はよく分かる。
苦労して生きてきた1世のしたたかさだ。2世、3世のみなさん、真似できます?(L)
(2001.05.16 民団新聞)
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