民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
21世紀の民族教育を見つめて

民族学校の現場から<番外2>



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YMCAの土曜学校
田附和久(在日YMCAスタッフ)

 在日本韓国YMCAで小中学生を対象に行われている民族教育プログラムが「土曜学級」です。毎週土曜日の午後、20人近くの子どもたちがYMCAに集まり、楽しい学びと交わりのときを過ごしています。午後3時から6時までの3時間で、1時間目が韓国語、2時間目はチャング、3時間目はカヤグムもしくはテコンドーのどちらかを選択する。

 土曜学級が目標としていることは大きく二つあります。一つは「同胞のなかまをつくる」こと、もう一つは「民族の文化に誇りをもつようになる」ことです。

 現在通っている大部分が、ふだん日本の学校に通っている子どもたちです。最近は学校でも韓国名を使っている子どもたちのほうが多くなっていますが、YMCAでだけ民族名を使う子どももいます。またニューカマーと日本人の親との間に生まれたダブルの子どもたちも増えています。

 かつてに比べると、日本の学校の中での露骨な差別的言辞や待遇は減ってきているものの、圧倒的少数者として多数者からの無関心にさらされながら存在していることが、子どもたちにとって大きなストレスとなっている実情は以前と何ら変わっていません。

 YMCAに集う子どもたちが、何のこだわりもなくお互いを民族名で呼び合い、キムチやチェサ(祭祀)の話で大いに盛り上がっているのを見ると、ふだんはがまんしているものがこの場所で一度に吐き出されているような感を受け、同胞の友人たちが集い仲間を作るための場所を提供する必要性を、あらためて強く感じさせられます。

 土曜学級を巣立った子どもたちに聞くと、とりわけ思春期のさまざまな危機を乗り越えるときに、同世代の同胞の仲間がいたことがほんとうによかったと言います。

 日常、圧倒的少数者として暮らしている子どもたちには、自分のルーツが韓国にあるということを否定的に思わせないようにすることもとても大切なことです。土曜学級で韓国語や韓国の伝統楽器・舞踊を学ぶ意味はそこにあります。それだけに内容も生半可なものであってはいけないと考え、それぞれ専門家の先生方に指導をお願いしています。子どもだからといって手を抜くことなく、本質を伝えようと努力されている先生方の姿勢を通して、子どもたちは人格面での成長の機会も得ています。

 リーダーたちは無償で(ときには自ら出費も惜しまず)、子どもたちの居心地のよい場所作りのために日夜努力してくれています。ときには在日のリーダーと、本国からの留学生、日本人リーダーの間で議論が戦わされることもありますが、在日の子どもたちの存在を通して何かを学ぶことは、将来必ずや、韓国社会、日本社会のさらなる民主化や人権意識の向上に影響を与えるものと信じています。

(2001.05.16 民団新聞)


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この連載は今回で終了させていただきます。



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