民団新聞 MINDAN
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在日へのメッセージ

「歴史の透明度」
前田憲二(映画監督)



 4月14日、右翼のクルマ十数台が「百万人の身世打鈴」の上映会を阻止するため、横浜・関内の教育文化会館に押し寄せた。

 街は騒然となり、観客は肩をすぼめ、劇場に群がった。

 右翼らの背景には、当然「新しい歴史教科書をつくる会」がはびこっている。映画を観た数名の人々は、教会や学校で上映の輪を広げたいと提案してくれた。

 歴史をわい曲し、その勢力を拡大しつつある「つくる会」や、右翼らの攻撃に対し、一方では民主化を願う人々も大勢いるということをそのとき私は知った。

 5月3日、全州国際映画祭に招待され、「百万人の…」上映を終え帰国した。

一週間ばかり全州にいたのだが、その間、多くのテレビや新聞の取材を受けた。質問は「日本における歴史教科書」についてだった。ソウルや全州では「つくる会」ノーの声が力強くこだましている。

 とは言え、日本の文化人や、在日の人々の声は力強く聞こえてこない。それはどうしたことだろうか?

 歴史問題について韓国政府が怒るのは当然で、この時代になった今でさえ、日本は歴史をごまかしている。植民地支配、慰安婦問題しかりだ。

 7世紀までさかのぼって考えれば、「大和朝廷」なるものは、新羅と唐の連合軍によって滅びた、百済が核になり、作り上げられたものと私は確信している。

 そのため百済は「記紀」をつくり、天孫降臨神話を正当化させた。

 列島各地、特に関西を中心とする百済遺跡は、そのことを見事に証明している。百済を消して日本史を語ることはできない。日本の歴史は、そこをしっかり押さえねばならない。

(2001.05.16 民団新聞)



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