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教科書、大局的見地で解決を



 歪曲された日本の中学校歴史教科書問題をめぐって、かつてないほど良好だった韓日関係が、にわかに緊張感に包まれています。在日同胞として憂慮に耐えません。

 韓国政府は八種類の教科書で計35カ所の修正を要求。これに対し日本政府は検定制度上、事実誤認がないかぎり修正は事実上できないとの立場を表明し、対立しています。これではいかにも日本の検定制度に対して韓国側の理解が足りないかのような印象を受けます。


■免れない文部科学省の責任

 しかし、「政府見解とは違う」としながらも「歴史観の自由」を理由に問題となっている教科書を最終的に合格させたのは文科省であり、その意味で日本政府の責任は免れません。間接的であれ国が検定制度に関わっているのは事実だからです。

 まず、日本政府は、歴史認識について、アジア諸国に与えた「多大の損害と苦痛」に反省とおわびを表明した村山富市首相(当時)の「戦後50年談話」を踏襲していると繰り返し、98年の韓日共同宣言でも「両国民、特に若い世代が歴史への認識を深めることが重要」と表明しています。

 韓国政府が「故意に脱落させ、残酷な行為の実態を隠ぺいした」と記述の追加を求めている「従軍慰安婦」についても、国連人権委員会からの勧告には「歴史教科書に記述している」と報告してきました。


■問われる「検定」の適切性

 「歴史認識」に関連した国際公約を順守すると強調しながら、一方で「検定教科書の記述と政府の歴史認識は必ずしも一致しない」とする日本政府の姿勢はわかりやすいものとはいえません。「検定作業が適切に行われている」と繰り返しコメントしてきた「適切」の中身が、いま問われているのです。

 韓国政府が今回、特に問題にしている「新しい歴史教科書をつくる会」主導の教科書についても、韓国併合について「合法的」などの記述こそ一部修正していますが、「日本の安全と満州の権益を防衛するために必要」「併合後、鉄道・灌漑などで開発が進んだ」と韓国併合を正当化している点は何ら変わっていません。このほか、申請本にあった「眠り続けた中国・朝鮮」というアジア蔑視的な小見出しは改められましたが、修正後も本文の記述はそのままなのです。

 これまでにも、国が「検定合格」としながら韓国や中国からの要望を受け再修正に応じた例はあります。1986年に外交問題に発展した高校歴史教科書『新編日本史』は合格内定後に4回の追加再修正をしました。

 韓日友好関係の持続と発展を望んでいる私たちは、歪曲教科書の不採用運動を展開する一方で、日本政府が大局的な見地から教科書問題の解決にあたることを望んでいます。

(2001.05.16 民団新聞)



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