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定住外国人の雇用環境に薄明かり?

神奈川が外国人実態調査



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正社員従事の男性、18〜39歳で過半数
40〜59歳、7割が自営業

 【神奈川】神奈川県内に在住するすべての外国籍住民を対象に県が2年がかりで実施してきた「生活実態調査」の結果(速報)がこのほど明らかとなった。報告書によれば、就職差別のため自営業に従事せざるをえなかったオールドカマーでも一般企業に正社員として進出していく傾向にあり、労働市場の開放化傾向がうかがえる。

 オールドカマーの「自営・会社経営」の比率が著しく高い現状はよく知られている。歴史的に行われてきた就職差別の結果として自ら起業せざるを得なかったのだ。

 今回の調査でもオールドカマー全体では男性が46・5%、女性でも23・2%を占めた。職種としては「経営管理」と「販売」が目立つ。これに対してニューカマーの「自営・会社経営」比率は6・6%にすぎなかった。

 ただし、オールドカマーでも年齢別の就業形態をみると明らかな様変わりが見られた。男性の「40〜59歳」では実に7割が自営業従事者であるのに対して、「18〜39歳」ではその比率が2割台に低下し、「正社員」と答えたのが男性では半数を超えている。


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就職差別いまも

 報告書は、「オールドカマー男性に限れば労働市場の開放化傾向を認めることができる」している。

 ただし、オールドカマーに対する就職差別が消滅・形骸化したとはいえないようだ。

 回答によれば、オールドカマーはどの年齢層でも、一度は「外国籍が理由で希望する会社に入れなかった」という体験を持っているからだ。


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本名使用は増加の傾向

 オールドカマーの本名使用率は、15年前に比べて確かに増えている。84年の調査では「本名のみ」は3・7%、「本名の方多く使用」と合わせても12・0%だったのに対し、今回の調査では「本名使用」は22・5%だった。

 しかし、回答者の八割弱がいまもなお「通名」を用いている現状からしても、「通名使用」が世代を超えて継続されている現状に変わりはない。「通名」を用いる理由としては、「日常生活の差別」や「就職差別」を回避するためという回答が顕著だった。

 オールドカマーは「通名をこれまでに使ってきた」ことも大きな理由となっているが、ニューカマーでも中国や韓国出身者のなかで「差別回避」を理由に「通名」を名乗る傾向が目立つというのは考えさせられる。

 報告書は「外国人」であることで何らの差別、不利益も受けることがないよう行政側の指導、啓発を求めている。


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9割以上が「選挙権」望む

 外国籍住民の政治参加意欲は、オールドカマーとニューカマーの別を問わず、全体としてかなり高いことが今回の調査で明らかとなった。

 主な政治制度や権利のうち「外国語で参加できるモニター」は62%が「必要」と回答、「地方議会議員、首長を選挙する権利(選挙権)」も60・4%だった。以下、「審議会委員への登用」(58・1%)、「地方議会議員、首立候補する権利(被選挙権)」(51・1%)と続く。

 このうち、オールドカマーに限れば、「地方議会議員、首長を選挙する権利(選挙権)」を必要とする回答は実に九割近くに上った。「被選挙権」や「審議会委員への登用」を望む声もそれぞれ八割前後に達した。

 逆に、「外国語で参加できるモニター」の必要性に関しては六割にとどまった。

 同報告書は、オールドカマーで年齢に関係なく地方参政権を求めていることをとらえ、「戦後補償の問題に限定されがちであった外国籍住民への地方参政権付与の問題を、今まさに日本社会で活動している人々の社会参加の問題として捉え直すことが必要」と訴えている。

(2001.05.16 民団新聞)



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