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「つくる会」の教科書許すな!

民団中央が公開講演会



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侵略戦争肯定など歪曲だらけ
検定後も変わらぬトーン
前田氏(子ども教科書ネット)が強調

 4月に文部科学省の137カ所の修正意見を取り入れて検定に合格した「新しい歴史教科書をつくる会」(会長・西尾幹二電気通信大教授)の2002年度版中学歴史教科書が、韓国や中国から厳しい批判を受ける中、2日に民団幹部を対象にした中央本部文教局主催の公開講演会が韓国中央会館で開かれた。「中学歴史教科書、何が問題なのか」と題する前田徳広さん(子どもと教科書千葉ネット21代表委員)の講演は、問題点から今後の展望まで、多角的観点からとらえた内容が紹介された。

 講演は、(1)『新しい歴史教科書をつくる会』の教科書(扶桑社版)はどんな教科書か(2)文部省はなぜ検定を通したか(3)教科書採択に向けての『つくる会』の戦略(4)扶桑社版の採択を許さないために―などの題目で進められた。


■どんな教科書か

 ◆神話と歴史を混同させる教科書=神話について9頁を割いているが、これは戦後史30頁の3分の1に相当し、神話を歴史的事実であるかのように記述している。

 ◆近代侵略戦争を肯定する、世界と仲良くなれない教科書=軍国日本の戦争観について、「大東亜戦争」史観が復活しており、これはアジア解放のための戦いであり、米国に戦争するようしむけられたと誤解を招く記述になっている。

 また、韓国併合は合法的、南京大虐殺はあたかも幻であるかのような記述になっている。

 ◆事実の間違いが書かれている教科書=韓国政府からの修正要求35項目(うち25項目が扶桑社版)、中国政府からの修正要求8項目と指摘、仮に韓国、中国から要求されている項目を修正しても、まともな教科書にはならないなどと位置づけした後、「つくる会」の歴史教科書が文部省検定を通ったことへの強い憤りを表した。

 また、口絵11頁の半分が危機管理、自衛隊の写真で占められているほか、天皇の権威に挑戦した足利義満は「空しく世を去る」や日英同盟を主張した小林寿太郎の判断を「正しい」と断定した記述など、バランスが悪く偏った考え方を押しつけている教科書で、また、難しい用語や表現も多く、中学生には分かりにくいと話した。


■採択への戦略

 ◆採択から現場教員を排除し、専門知識のない教育委員に決めさせる=教科書に関する法を恣意的に解釈している点などをあげた。

 また、教育委員に扶桑社版教科書を採択させるように圧力をかける項目については、産経新聞で連載された「中学校歴史・教科書の通信簿」を利用し、現行の教科書は「自虐的」「反日的」とし、議会での現行教科書を批判した。


■不採択のために

 ◆文部省の合格取り消しは事実上難しい、採択をさせない運動を=扶桑社版教科書の危険性を宣伝し、教育委員会宛の署名を募る。扶桑社版教科書を研究し、それぞれの立場から不採択にするよう要請を出す。

 採択過程についての情報公開を求め、決定に市民に対する責任を持たせるなど、一連の行動行為を通してアピールしていく必要性を訴えた。

 また、これらの問題点を明らかにしていくことは、戦後55年にわたる学問的事実と大衆の意識間の乖離、戦争についての国民の意識の二重標準の状態を正すことにつながり、これを通して過去を克服し、21世紀の世界に日本人の歴史認識の標準を作り出していく運動にしていかなければならないと結んだ。

(2001.06.13 民団新聞)



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