民団新聞 MINDAN
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在日へのメッセージ

藤原史郎(全朝協会長)



◆在日から民族を奪うもの

 昨年8月、在日コリアン洪昌守がWBC世界チャンピオンになった、敗者はチャンピオン韓国のソウ仁柱。洪は勝利したリング上で、統一旗を振った。その旗は両者共通の願いだったと思う。それと同デザインの統一旗がシドニーオリンピック入場行進に登場した。世界の人々は冷戦体制の本格的終焉を予感した。この2つの出来事は今も記憶に新しい。

 同年10月、私の勤務校の文化祭では在日外国人生徒同胞の会の生徒とハングル教科受講の生徒らがステージで「ウリエソウォン」を合唱。後期の人権学習の初日、ニュース番組で放送された洪昌守の冒頭の場面を全校生徒が鑑賞した。

 「本名」と「旗」を降ろせばスポンサーがつき実況放送されたであろう。在日コリアンにとっての本名の大切さ、コリア統一の世界史的重大さを生徒らは真剣に考えた。ところが12月の初防衛戦、相手は日本人の名護明彦、この試合をTV情報雑誌『ザテレビジョン』(角川書店)は「今世紀最後の日本人同士の世界戦」と予告報道した。

 これは変だと指摘したのは本校「同胞の会」の生徒。早速抗議の質問状を提出した。同誌編集長は来校し生徒らと話し合った結果、洪昌守を前に謝罪、同誌上でも謝罪。だがあくまで「当誌の誤報」に対する謝罪で、誤報が招いた差別―直接には洪氏の人格と民族性の否定、在日コリアンに対する同様の否定―への謝罪を拒む。差別の意図がないから差別にはならないと言明。角川書店主様、差別に負けず「いかにして本名になったか」を編集長に語った本校生徒らの涙まじりの声をご返却願いたい。8月19・20日、神戸での「全朝教」大会の場で、私はこのことを報告し参加者の判断を仰ぎたいと思っている。

(2001.06.13 民団新聞)



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