民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
「帰国事業」は欺まん

脱北同胞が朝総連を提訴



■□
北送後1962年に脱出の金幸一さん
「金日成大学に入学できる」はウソ

 「死ぬ前に帰国事業の総連の責任を明らかにしたかった」と、韓国在住の金幸一さん(59)が4日、550万円の賠償を求めた「帰国事業での朝鮮総連の責任を問う」民事訴訟を東京地裁に起した。同問題で総連が訴えられたのは初めて。

 訴状提出のあと、金さんは担当の藤森克美弁護士とともに東京霞ケ関の弁護士会館で記者会見を行った。会見には「北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会」の小川晴久、金民柱、萩原遼の三共同代表が同席した。

 金さんは当時、朝鮮総連の「金日成総合大学で学べる」という言葉を信じて1961年6月9日、第62次帰国船で、両親や弟を日本に残し北韓に渡った。ところが、咸鏡北道のソ連との国境に近い雄基にある機械工場で働かされ、食糧も満足になかったという。

 渡航前に聞かされていた「地上の楽園」とはほど遠い現実とのギャップに「帰国事業」の欺瞞性を日本に戻って訴えたい、と金さんは62年11月25日、一人で歩いて軍事境界線を突破し、韓国に脱出した。

 しかし、95年まで日本に行けず、金さんはこのたび藤森弁護士と「守る会」の支援で訴訟にこぎつけた。金さんは愛知県岡崎市出身。韓国では食堂経営に従事した後、現在はタクシー運転手をしている。藤森弁護士は「統一教会」や「ヤマギシ会」、「法の華三法行」などの訴訟も手がけて勝訴した。「帰国事業を推進していた総連には十分な情報提供を行い、大学進学の機会など帰国者の期待に答える義務を怠っていたと言える」と訴状を説明した。第1回公判は8月末か9月初めになる見込み。

(2001.06.13 民団新聞)



この号のインデックスページへBackNumberインデックスページへ


民団に対するお問い合わせはこちらへ