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慎武宏の韓国サッカーレポート

<アジアの虎の鼓動>目標は来年



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最終目標はあくまで2002年W杯
ヒディンク体制5ヶ月・秘めた可能性実感


ヒディンク監督就任から5ヶ月。
韓国サッカーは徐々に変貌しつつある

◆コンフェデ杯の結果

 コンフェデレーションズカップにおける韓国と日本は、ハッキリと明暗が分かれた。

 フランス、メキシコ、オートラリアが属したグループAで2勝1敗の成績を収めた韓国だったが、フランス戦で喫した5失点が響いて得失点差でグループリーグ敗退。一方の日本は、カナダ、カメルーン、ブラジルを抑えて堂々のB組1位の座を射止め、オーストラリアも下して決勝戦に進出。フランスの前にまたしても屈したものの、FIFA主催の国際大会で準優勝という成績を残した。

 この対照的な結果に、日本の一部マスコミでは「韓国危機説」も流れたそうだが、私はそうは思わない。むしろ確かな成長を実感できたと思う。

 例えば戦術面だ。ヒディンク体制発足から5カ月が過ぎた今大会、フランス戦では4-5-1、メキシコ戦では3-5-2、オーストラリア戦では3-4-3の布陣を採用。「対戦相手によってシステムは変わる」というのがヒディンクの口グセだが、その多様性は随所に発揮されたし、選手たちも無難に消化した。

 それは、選手たちがヒディンクのスタイルを理解しはじめた証拠だと言ってもいい。メキシコ戦とオーストラリア戦で見せたその試合運びには激しさと安定感があった。意図が明確に伝わってくるその戦いぶりに、変貌への強い意欲を感じずにはいられなかった。


◆大敗しても崩れぬ集中力

 大敗しても大崩れすることなく、最後まで集中力を維持し続けたメンタル・タフネスも見逃せない。根拠のない根性主義に頼らないその精神的な強さは、間違いなくヒディンク体制になってもたらされたものだったと思う。

 何よりも今大会が「本番ではない」という事実を忘れてはならない。ヒディンク監督も「最終目標はあくまでも2002年。今大会はそれに向けての過程に過ぎない」とした。すなわち、まだ道の途中。発足5カ月目のヒディンク・コリアと「3年目」に突入したトルシエ・ジャパンを比較すること自体、無理がある。

 そうした観点に立てば、最終目標のために改善すべき問題点もハッキリしてくる。


◆守備システムの構築が急務

 例えば守備システムの構築。マンマークよりもスペースを消すことに主眼を置いたフラットなディフェンスラインからは、世界の潮流を取り入れようとする明確な意志が伺えたが、4バックであれ3バックであれ、カバーリングでのミスが目立ち、ポジション取りの悪さから簡単に突破を許してしまう場面が何度もあった。近代サッカーでは守備の出来が勝敗のカギを握るだけに、安定した守備システムの構築が急務だろう。

 もっとも解決せねばならない問題は「恐欧症」だ。韓国は伝統的にヨーロッパ勢を苦手にしてきたが、ヒディンク体制になってもそれは改善させいない。W杯でもヨーロッパ勢との対戦は避けられないだけに、「恐欧症」克服は急務だ。特効薬はヨーロッパの強豪との試合を数多くこなすことしかない。大韓蹴球協会も今後の強化試合をヨーロッパ勢中心に行なっていくことで方向転換した。果して、ヒディンク・コリアはその厳しい戦いの中で何を得ていくのか--。

 何も知らずに危機感だけを煽りたがる一部の報道に惑わされてはいけない。フランス戦大敗後に韓国で「解任」や「退任」と言ったヒディンクへの責任追求報道が出なかったのは、韓国国内のコンセンサスが「ヒディンク体制で2002年W杯で挑む」ということで一致している表れであり、本番まで時間が少ないことは、そもそも外国人監督招聘を決断した時点で承知していたこと。その経緯を熟知していれば、今さらジタバタ騒ぐ事柄でもない。


◆悔しさは「本番」で

 着目すべは、この5カ月で「何ができて、何が課題なのか」。そして、残りの準備期間をいかに有効的に活用していくか、なのである。

 確かに、開催国でありながらグループリーグ突破を果たせなかったことは残念だった。同じ開催国でありながら早々と大会から姿を消し、その成り行きを外野から見守ることしかできなかったのに一抹の寂しさも覚えた。しかし、韓国には「ムチの味も先に味わっておくほうがいい」という格言もある。今大会の悔しさは本番で晴らせばいい。大会期間中、彼らに密着したが、私はそれができると信じている。

 明確な根拠はないが、予感はある。選手と監督が目標に向かってベクトルをひとつにしているその一体感に、私はヒディンク・コリアの秘めた可能性を実感せずにはいられなかった。

(2001.06.20 民団新聞)



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