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「つくる会」教科書の不採択運動展開

在日研究者が東京・大阪で集会



在日韓国人の学者、研究者が集まって
開かれた「歴史教科書を考える在日韓国人
研究者の集い」(6/23・東京)

 在日韓国人の学者、研究者らは23日、東日本と西日本で「歴史教科書を考える在日韓国人研究者の集い」(同実行委員会主催)を開き、「新しい歴史教科書をつくる会」が主導して編纂した中学歴史教科書の不採用を求める声明を発表、「近現代史の生き証人」の立場から史実に基づいた歴史認識の定立に向けた具体的な取り組みを展開していくと明らかにした。

 また、この日の集いにあわせて実行委員会では、戦後の日本社会が真剣に過去を直視し、共存の意識を培ってきたかを問う、在日同胞の視点からの「問題提起」と「近隣諸国との友好と理解を反古にする教科書」とする声明にまとめて発表、採択された。実行委員会ではこの日の声明を要望書にして近く文部科学相に直接伝達する。

 在日同胞の視点から「つくる会」の歴史教科書を考え、教育現場で使われることが無いように幅広くアピールするために23日に東京と大阪で開かれた「歴史教科書を考える在日韓国人研究者の集い」では、数多くの研究者が参席し、歪曲した教科書を批判した。今後、教育現場での不採用運動とともに平和と友好関係に役立つ教科書の副読本出版も視野に入れて活動を展開する。

 東日本地域の「集い」は都内のホテルで開かれ在日同胞大学教員で構成する実行委員と趣旨に賛同する関東近県の民団、婦人会関係者らが多数参加した。

 準備委員であり東日本地域実行委員会代表でもある李進煕・和光大学名誉教授は「韓国の歴史を歪曲、かつての戦争を美化した『つくる会』教科書が採択されれば、これからの青少年が在日同胞子弟に対してどのような隣人意識を持つだろうか。日本の大学に籍を置き日本を愛する教員として到底座視できない」と不採用運動に立ち上がった理由を述べた。

 問題提起として「『つくる会』の挑戦を退けられるか否かは戦後日本社会が、どれだけ真剣に過去を直視し、開かれた共存の意識を培ってきたかを問う試金石となるであろう」と注意を喚起、声明(要旨別掲)でも「近隣諸国との友好と理解を反古にする教科書」であり「学校現場で使用されてはならない」と訴えた。

 また、全国の市町村教育委員会にも「つくる会」教科書の不採用を求める要請文を「問題提起」とともに発送する。このほか韓国国内と日本のマスコミなどを通じて意見表明。秋にはシンポを開催し、隣国との平和と友好関係に役立つような歴史教科書の副読本を出版していくことも検討していると、具体的な行動計画の一端を示した。

 一方、上六の都ホテルで開かれた大阪での集いでは、鄭早苗・大谷大学教授をはじめ徐龍達・桃山学院大学教授や在日同胞教授ら、日本人市民約90人が参加し、問題の「新しい歴史教科書」が学校現場で採用されないよう強く訴えていくことを確認した。

 実行委・準備委員の姜在彦・花園大学教授は「つくる会」の歴史教科書に関して「中国や韓国との関係史をひき合いに出しながら、日本国の優越性、そして韓国、中国に対する蔑視感がにじんでいる。私たちの子弟の90%が日本の学校に通っているが、これでは民族の誇りを持てず、本名も使えなくなることが憂慮される」と述べた。

 続いて、民団中央本部の具文浩副団長が「私たちの子弟が歴史を歪曲したままの教科書を見て、どうして民族的な誇りが持てようか。この本が採用されることを座視する訳にはいかない」と、教育現場での不採用を強く要求する金宰淑同本部団長の激励辞を代読した。

 京都大学の水野直樹教授は「182カ所もの誤りがあったとは、驚くばかりだ。在日の方はもっと声を大にしてほしい」と連帯辞を述べた。

(2001.06.27 民団新聞)



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