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歴史教科書を考える

在日研究者の集いの声明文(要旨)



 私たちは日本の大学で研究と教育に携わる在日コリアン研究者として、2002年度から使用される扶桑社の『新しい歴史教科書』を分析した結果、教科書として不適切であると判断します。

 この教科書は、国連総会において決議された「人権教育のための国連10年」を受けて日本政府が95年に内閣に人権教育のための国連10年推進本部を設置し、「教育は人間の人格の完成並びに人権及び基本的自由の尊重の強化を志向する」と確認したこととに抵触します。さらに「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約(人種差別撤廃条約)」にも抵触します。

 82年の歴史教科諸問題以降、教科書検定基準に近隣諸国条項が付け加えられ、アジア諸国の記述が一部改善されるようになってきました。そして日本とアジアは歴史認識において共通項を有し「理解、寛容及び友好を促進」していくものと期待していました。『新しい歴史教科書』を検討した結果、そのような近隣諸国との友好と理解を反古にする教科書だと判断いたしました。

 まず、この教科書は日本の歴史を美化するために、韓国と中国との関係を引き合いに出して、朝貢とか従属、属国などの用語を頻繁に使っていますが、これは許しがたいことです。さらに許せないのは、韓国併合を正当化し、植民地支配があたかも韓国に恩恵をもたらしたかのように歴史をねじ曲げている事です。

 21世紀を担う日本の若い世代は、何よりも近隣の諸国民から信頼されねばならず、そのためには過去の誤った歴史を冷静に見直し、二度と過ちを繰り返さないという姿勢を貫くべきでしょう。

 さらに、日本が多民族の人々と共存しているという視点が欠けています。日本の構成員は日本人だけではありません。周知のように日本の植民地政策の結果、戦後も引き続き台湾、朝鮮半島出身者とその子孫達が住んでいるのです。

 日本の学校で学ぶのは日本人の子どもだけではありません。日本人の子どもと外国人の子ども達が、平和で友好的で人権を尊重することのできる歴史教科書で学ぶことが要求されています。

 以上の理由により、私たちは『新しい歴史教科書』が学校現場で使用されることを危惧し、教育委員会において採用されることがあってはならないと強く要望いたします。

(2001.06.27 民団新聞)



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