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問題教科書の不採択めざそう



 来年度から使用される中学歴史教科書の採択の最終局面を迎えて日本国内での論争はさらに激しくなっています。「つくる会」の教科書そのものは言うに及ばず、このような教科書をうむにいたった社会的背景とそれを容認した歴史認識の在り方にいち早く異議を表明した本団は、不採択運動を全組織をあげて積極的に推進しています。


■「研究者の集い」は大きな力

 運動の最中の6月23日、在日同胞の歴史研究者たちが東と西に分かれて問題教科書の不採択を求めて立ち上がりました。研究者らは、各人の専門研究分野を活かし、問題教科書をつぶさに調査した結果、「韓国の歴史を歪曲し、かつての戦争を美化するこのような教科書が採択されれば、これからの青少年は、韓国と私たちに対してどのような隣人意識を持つだろうか。日本の大学に籍を置き、韓国と日本を愛する教員として到底容認できない」と批判しました。さらに、古代史から、韓国併合、植民地時代の近・現代史に至るまで独善的な記述に満ちていると具体的に問題点を提起しました。研究者らの取り組みは、問題教科書の不採択運動を日本人市民と共にすすめている本団にとって大きな力であります。

 韓国政府の再三にわたる再修正の要請と問題点を指摘する各界各層の多くの声に押されて、「新しい歴史教科書をつくる会」の西尾代表がようやく7月2日に自主修正の発表をしました。


■史実に基づいた認識共有を

 しかし、日本の歴史を美化したいがために韓国や中国との関係を貶めたり、植民地政策を正当化する意図については表現を変えたにすぎません。「新しい教科書」どころか、皇国史観に先祖がえりする「古い教科書」のままと言えます。さらに、一部用語の修正に応えたことによって、全体のバランスが一層欠けることになるでしょう。私たちは、批判力の乏しい子どもたちがこの教科書で学ぶことによって、近隣諸民族への差別排外思想と侵略主義が植え付けられる憂いが、そのまま存続していると指摘せざるをえません。

 平和と人権の21世紀における韓日・日韓の相互理解をめざし、史実に基づいた歴史認識の共有が改めて求められています。私たちが誰よりも関心を持つのは、次代を担う日本の若者がどのような隣人認識を持つのか、にあります。彼らの意識の変化一つで私たちのあり方も変わるからです。

 「つくる会」の挑戦を退けられるか否かは、戦後日本社会がどれほど真剣に過去を直視し、開かれた共存の意識を培って来たかが問われることでもあります。

 研究者の提言も含めて、80年代以降、日本社会に澎湃としておこってきた外国人と共に生きる社会をめざす日本市民と一緒に、歪んだ自己満足史観に彩られた教科書の不採択を求めて、全力で運動をすすめていきましょう。

(2001.07.04 民団新聞)



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