民団新聞 MINDAN
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高深雪さん

(奈良市初の外国籍公務員)



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外国人の声を反映させたい
後輩へのチャレンジにエール

 外国籍住民としては初めて奈良市(大川靖則市長)の一般事務職採用試験に合格したのが在日韓国人3世の高深雪さん(25)=奈良市在住=だ。公務員として勤務してすでに3カ月が経過した。業務にも慣れ、いまは外国籍住民の声にもよく耳を傾けて、誰にとっても住みやすい町づくりに貢献していきたいと話している。

 高さんは今年の4月から文化財課庶務係に配属された。デスクワークをこなしながら行政のなかで自分のできるものは何なのか、いつも自問自答している毎日だという。希望がかなうものならば多くの住民と直接触れ合える市民課の窓口に立つのが夢だ。 

 高さんは東北大学大学院で中東アジア問題について学んだ。在学中は多くの外国人留学生と出会い、世話にあたった。高さんが行政に目を向けるようになったのも、この“留学生体験”によるところが大きい。

 外国人留学生は大学当局に提出する事務的な文書づくりで四苦八苦していた。見るに見かねて手伝ううち、書式が日本語で統一されていることに疑問を持った。「国立大学の機関でこれはおかしいのでは」と。私学では各国から入学してくる留学生に応じて、書式にも工夫と配慮のあとが見られた。このことが「内なる国際化」について考えるきっかけとなった。

 やがて高さんは「それならば、自分の住んでいる自治体だけでも外国人に住み良い環境にしていきたい」と考えるようになったという。「奈良市は世界遺産に登録されているお寺や遺跡が多く、韓国との対外交流も進んでいる。一方で内なる国際化への取り組みはまだまだ」との思いがあったからだ。

 奈良市が公務員一般事務職採用時の国籍要件を撤廃していたのは知っていた。昨年10月、「奈良市民だより」で募集要項を確認、すぐに受験申請をした。受験者は最終的に1171人に達した。倍率は107倍という狭き門。1次試験で15人に絞られ、2次試験を経て最終10人の中に残った。高さんはすでに日本障害者雇用促進協会に内定していたが、地元自治体で働きたいとの固い気持ちは変わることはなかった。

 高さんは大阪市生野区の生まれ。本名で地元の公立小学校に通っていたが、5年生の時に両親の事情で奈良市内に転居。奈良女子大付属中・高校を経て大阪市立大学国際学科で学んだ。大学では語学の選択科目で「朝鮮語」を選んで2年間、学んだ。

 晴れて奈良市の公務員になったいま、課題は同じ立場で考えられる仲間づくり。「奈良市に住む外国人の声をよく聞いて行政に反映していくためには、自分自身もっと勉強しなければならないし、やはり仲間を広げていかなければならない」という。そういう意味でも「後輩が後に続いてほしい」と願っている。

 「受験してもどうせだめだとあきらめないで、まずチャレンジしてください。在日同胞だけではなく、いろんな国籍の外国人が同じ立場で一緒に仕事のできる市役所になっていくのが理想」と高さんは話している。

 高さんは市内に居住する在日同胞高齢者の介護問題にも関心を持っている。将来、市民課の窓口で高という本名の名札が来庁者に違和感なく受け入れられる日の来ることを願っている。

(2001.07.11 民団新聞)



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