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扶桑社の中学歴史教科書

全国各地で「不採択」



公開で行われた堺市教育委員会の教科書最終審議

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神戸、堺、天理市でも 静岡、徳島、佐賀は県全地区で

 「新しい歴史教科書をつくる会」(会長、西尾幹二電気通信大学名誉教授)が中心となって編集した中学歴史教科書(扶桑社発行)を不採択とする教育委員会が全国各地に広がっている。兵庫県で神戸市、大阪府内でも堺市が「子どもたちには記述が難しすぎる」などの理由でいち早く扶桑社版以外の教科書を採択した。このほか、北海道、福島県、新潟県、神奈川県、静岡県、徳島県、佐賀県などでも不採択が確認されている。

 【兵庫】神戸市教委では扶桑社発行の中学歴史教科書について「子どもたちに教え込むという比較的古いスタイル、トーン」が問題となった。9日の最終審議では各委員から「子どもたち自ら学び、考える新しい学習指導要領に照らしても他の教科書に比べ劣っている」などの意見が大勢を占めたという。ただし、歴史観にまで踏み込んだ意見は出なかった模様だ。

 同市教委は教科書採択にあたって(1)学習指導要領および神戸市教育課程基準(2)教材の配列・分量・程度―など5つの観点を設けていた。最終審議会に提出された採択原案作成委員会からの報告書でもこのうちの3点で「問題点あり」としていた。兵庫県内で扶桑社発行の歴史教科書不採択を決めたのは神戸市が初めて。

 【大阪】大阪府堺市教育委員会(高橋一徳教育長)は12日、来年4月から市内の公立小中学校で使用する教科書を選ぶ最終審議を開き、扶桑社版中学歴史・公民教科書の不採択を決めた。府内45の採択地域のうち来年度使用の教科書を決めたのは堺市が初めて。

 歴史教科書では文部科学省の検定を通った8社の教科書すべてが検討された。このうち扶桑社版歴史教科書については各選定委員から「ページ数が他社より多く、難しい言葉も多く使われている」「問いかけが少なく課題学習も少ない。生徒に考えさせることも少ない」「大幅な修正に不安と疑念がある」といった否定的な意見が各選定委員から出た。

 これを受けて楠本清教育委員長は「社会生活の中で一番大切なことはコンセンサスとバランスです。そういうことから扶桑社の教科書は難点がある」と述べた。堺市内には公立小学校90校、中学校40校、市立高校4校がある。

 【奈良】天理市を初めとする1市3村の教育委員会で構成する奈良県の教科用図書図書第3採択地区協議会採択地区協議会でもこのほど扶桑社版以外の歴史教科書を決定していたことが明らかとなった。天理市はこの結果を姉妹都市関係を結んでいる忠清南道瑞山(そさん)市教育委員会に文書で伝えた。今後は地区内の各教育委員会が採択の可否を最終決定する。

 天理市と瑞山市は91年に姉妹都市を提携、今年が姉妹都市10周年にあたる。これを記念して、8月初めに瑞山市から副市長と中学生サッカー選手ら25人が天理市を訪問することが決まっている。

 天理市教育委員会では「子どもたちは瑞山市の中学生が来るのを楽しみにしている。10年かけて積み上げてきた姉妹都市交流を大切に続けていきたい」と語っている。


沖縄県も

 神奈川県では11日の湘南地区採択協議会(藤沢、鎌倉、茅ヶ崎、寒川地区)での決定を受けて藤沢市教育委員会がすでに不採択を決めた。18日には「つくる会」の請願を採択している鎌倉市教育委員会でも最終審議が予定されている。

 市民団体「子どもと教科書全国ネット21」の調査によれば、このほかにも北海道帯広市と留萌地区、新潟の上越地区と柏崎市、福島県郡山市、東京の狛江市、千葉県の3地区、静岡・徳島・佐賀県では県下全地区、および沖縄県などで扶桑社版歴史教科書の不採択を決めたという。帯広市は「つくる会」の重点地区とされていたところ。

(2001.07.18 民団新聞)



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