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教科書選択・教師排し教育委が主導

東京大田区や杉並で鮮明化



 来年4月から公立小中学校で使用する教科書を選ぶ最終審議が今週から東京でも本格化する。東京では「新しい歴史教科書をつくる会」の主張に沿った「通知」が2月に横山洋吉教育長名義で出されており、採択の行方は予断を許さない。23区でも特に「つくる会」の影響力が強いとされる大田、杉並の実状を見てみた。

 大田区で「つくる会」側は、学校票を廃止して教科書採択から教師の意見を排除するよう求める陳情をいち早く99年に出した。これを受けて昨年3月に発表された「平成12年度大田区教科用図書採択要項」では学校票を廃止し、新たに学識経験者らで構成する選定委員会と調査委員会を設置することが盛り込まれた。 ここでは調査委員会が各教科ごとに客観的な資料を作成し、選定委員会を経て教育委員会で採択することになっている。 市民団体「公正な教科書採択を求める大田区民の会」が選定委員会での議事録を調査した結果、選定委員会までは現場の教師の意見が尊重されていたものの、教育委員会では選定委員会の議論を無視した恣意的な採択が行われていたことが明らかとなっている。

 今年度の教科書採択要項を見ると、さらに後退した内容となっている。選定委員会は答申ではなくただ調査資料を作成する立場に追いやられ、名称も調査委員会に変えられた。この結果、教育委員の5人は完全にフリーハンドで教科書を決めることができるようになった。これは従来以上に教科書採択に教職員の意向を反映するよう求めた97年の文部科学省「通知」にも反するとの指摘もある。

 同じく杉並区でも「杉並の教育を考える会」が昨年2月、学校現場からの意見反映に反対する陳情書を提出している。陳情は区議会文教委員会で継続審議となり、杉並区教科用図書選定審議会には学校現場からの報告書や展示会場でのアンケート結果が報告書として上げられるようになった。 ただし、山田宏区長は昨年11月、教科書採択に現場教師の意見を尊重するよう求めた3人の教育委員を入れ替えようと試みたことが明らかとなっており、父母らの不安は消えていない。

 これに対して都下では小金井市教育委員会のように「教育委員会の責任で採択するが、採択するための資料作成にあたっては今まで以上に現場の先生の意見を重視している」というころもある。町田市教育委員会でも審議会メンバーの人選にあたっては今年から教員代表と父母代表をそれぞれ1人から2人に増やしている。

(2001.07.18 民団新聞)



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