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在日へのメッセージ

「北京五輪で大丈夫?」
氷室興一(日本TV中国総局)



 北京の「世紀壇公園」はその瞬間、大きな歓声と悲鳴に包まれた。シドニーに惜敗した8年前の雪辱をそそぐ五輪開催権獲得。

 いつの間にか現れた江沢民主席が満面の笑みで演説、花火が次々に打ち上がる。常に厳戒の天安門前も車と人で埋まり北京っ子も「天安門事件の時みたい」と驚いた。騒ぎすぎ?いやそんなことはない。国際オリンピック委員会(IOC)の視察を前に冬枯れの芝生に緑色スプレーを吹き付けたり道路フェンスを雑巾掛けしたりと、バカバカしさを通り越しいじましさすら感じさせる努力の末の勝利なのだから。

 発表の瞬間、私はモスクワでIOC総会を取材中だったが、中国人記者も目を赤くして喜んでいた。東京やソウルの時もこんな熱狂だったのか。少し羨ましかった。

 パリ、トロントと並び本命とされた北京にとってアキレス腱は「人権」。北京は従来の「そんなもの存在しない」という態度を一転させ、記者出身のスポークスマンが英語でにこやかに「五輪が来れば状況は更によくなるはず」と説明し乗り切った。毎年10%前後のびる経済成長もアピールできた。

 暑いと上半身ハダカで歩くし、タンは吐くし、交通モラルだってない北京で大丈夫かなあ、と危惧もある。一方、東京五輪の年に無くなったくみ取り便所は北京では既に追放されているし、ソウル五輪の後、韓国では文民政権への移行があった。7年後の北京をそう悲観する必要はないのかも知れない。そう思いたい。それより北京・中国の活気が景気低迷に喘ぐ日・韓に好影響を与えてくれないだろうか。

(2001.07.25 民団新聞)



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