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韓日の新たな信頼関係に向け



 21世紀は平和と人権の世紀と言われています。これは20世紀が戦争の世紀であったためにその反省から打ち出されたと言えます。この20世紀の負の遺産をどのように解消するかが問われる世紀でもあります。

 先日、第2次大戦中に中国から強制連行され終戦を知らずに13年間、北海道の山中で逃亡生活を送った故劉連仁さんが日本国に賠償を求めた訴訟で東京地裁は請求賠償額の全額を容認するという初めての判断を示しました。


■正義、公平の判決

 戦後補償関連訴訟では、98年に山口地裁下関支部が原告の賠償請求の一部を認めた判決はありますが、今回は強制連行・強制労働を国策として事実認定し、被った被害に対する回復措置を怠った日本の「戦後責任」を明確にしたことが特徴です。

 特にこれまで戦後補償訴訟では民法で定めた「不法行為の時から20年が経過すれば賠償請求権は消滅する」という除斥期間が大きな壁となっていましたが、今回、正義、公平の視点からこの除斥期間の主張を制限する解釈が出たことで画期的な判決と言えます。

 このように司法が被害者救済を優先したのが、除斥期間関係では今年五月のハンセン氏病訴訟における熊本地裁で回避判決があり、戦後補償訴訟では昨年の不二越訴訟、花岡訴訟での企業との和解です。これまで戦後補償訴訟では、原告に理解を示しながらも独自の司法判断を示さず、早期の立法措置を望むと立法府に委ねてきた司法の姿勢からみると負の遺産の解消に向けた弾力的な判断と言え、好ましい限りであります。


■歴史認識の共有を

 一方で、昨今の教科書問題や靖国問題が、韓国を始めとするアジア諸国との外交問題までになって、物議を醸しだしております。これは負の遺産をそのまま継承している憂慮するべきことです。特に教科書問題は、戦前に回帰するかのような歴史事実の歪曲した記述ですし、このような教科書が現出した社会的背景や容認に至った歴史認識が問われています。

 民団は在日同胞が韓日間の不幸な歴史の生き証人として歴史認識の共有を訴え戦後補償を提議しました。この歴史認識の共有はこれからの3、4四世が民族的な誇りを喪失することなく、また、差別と蔑視が繰り返さないようにするために必要なことであります。

 この歴史認識の共有の重要性は95年の日本の国会決議でも明らかにしています。また、98年の韓日パートナーシップ宣言では、過去の歴史問題に決着をつけ、新たな信頼関係の構築を明記しております。

 時代認識を共有できる社会を創り上げることが、20世紀の負の遺産の解消に繋がり、日本の多文化共生社会の具現化になるのではないでしょうか。

(2001.07.18 民団新聞)



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