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扶桑社の歴史教科書

重点地区で次々と不採択



杉並区役所前で採択反対を訴える市民ら

 「新しい歴史教科書をつくる会」の主導した中学歴史教科書の不採択が各地で相次いでいる。特に「つくる会」が力を入れていたとみられる栃木県下都賀地区、東京の杉並、千代田、国立で不採択が決まったことが大きい。市民団体では「10%以上取るというもくろみはかなりうち砕きつつある。公立中では1地区たりとも使わせたくない」と語気を強めている。不採択地区は全国543地区の約20%を超えた。


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栃木下都賀地区
内定から逆転の不採択

 【栃木】全国に先駆けて「新らしい歴史教科書をつくる会」の中学歴教科書を導入することを内定していた栃木県下都賀地区採択協議会(小山市、栃木市など2市8町で構成)は7月25日、再協議の結果、一転不採択を決めた。

 2週間ぶりの再協議は小山市の県立施設に地区内10市町の教育長、教育委員長、保護者代表23人が出席、非公開で行われた。

 関係者の話を総合すると、まず、各教委が「つくる会」教科書採択に対する賛否を報告したという。その結果は壬生町を除く9市町すべてが反対だった。中には「近隣諸国への影響を考えるべきだ」という意見も出たようだ。

 前回の協議会では、調査段階で評価の低かった扶桑社版が、一部委員の強硬な意見に引きずられて内定した。このあと、最終的な採択権のある各市町の教委では扶桑社版に対する反対意見が相次ぎ、2市7市町が採択協議会と反対の結論を出していた。


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東京の主戦場
杉並の不採択で他も続く

 東京の主戦場の一つとなった杉並区では最終審議の始まった7月24日、同胞、市民ら552人(主催者発表)が「人間の鎖」をつくつて区役所を包囲、「つくる会」の教科書採択反対をアピールした。地元民団と婦人会の本・支部からも有志が多数参加、「日本の学校に子を送る親として扶桑社教科書の採択は絶対に許せない」と声を上げた。

 この結果、7月25日の教育委員会では歴史、公民とも扶桑社版教科書の採択は見送られた。

 4月からコツコツ計1万2000人分もの署名を集めるなどして「つくる会」の教科書採択に反対の運動を展開してきた日本人市民団体「杉並・親の会」はこの日、杉並区産業商工会館で開いた報告集会で「薄氷を踏む思い」で手にした勝利をかみしめた。メンバーの一人で来春、中学に進む子どもを持つ母親は「これで親の責任を果たせた」とほっとした表情を浮かべていた。

 また、千代田区、立川市、国立市、国分寺市、昭島市、国分寺市、八王子市、稲城市、あきる野市、清瀬市の各市教育委員会でも扶桑社版の採択を見送った。


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三重
歴史認識の調査へ

 【三重】民団三重県本部(姜勝煕団長)は7月25日、「新しい歴史教科書をつくる会」主導で編集された中学歴史教科書(扶桑社発行)を来年度から採用すると決めた皇學館中学校を訪れ、教職員を対象とする歴史認識に関するアンケート調査を依頼した。

 設問は日本のかつてのアジア諸国に対する植民地支配、および戦争行為についての認識を問うものとなっている。

(2001.08.01 民団新聞)



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