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浮島丸沈没・国の責任一部認定

京都地裁、「安全送還義務怠る」



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計4500万円の賠償支払い命令

 【京都】解放直後、釜山に向かう途中、立ち寄り先の京都・舞鶴湾で爆沈した浮島丸に乗船していた韓国人生存者と遺族が国を相手取って総額30億円の損害賠償と公式謝罪などを求めていた訴訟で、京都地裁は23日、「安全に運送する義務に違反した」として、原告の一部15人に一律300万円の慰謝料を支払うよう命じた。
 原告側は、国は国策として植民地を支配、戦争遂行のために徴用した朝鮮人労働者らを働かせ、敗戦に伴う軍務として本国へ帰還させていた以上、沈没に伴う責任を免れないと主張。
 判決で水上敏裁判長は「徴用によって日本に連れてきていたこれらの原告を(国は)安全に朝鮮に送り届けることは条理上被告に要請されていた」と指摘。そのうえで「釜山港まで安全に運送する義務」、これが不可能であれば「安全に最寄りの港まで運送し、又は出発港に還送すべき義務を負っていた」と述べ、損害賠償を請求していた20人のうち15人に対して債務不履行に伴う慰謝料合計4500万円の支払いを命じた。

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謝罪要求は棄却

 ただし、乗船者本人として「安全配慮義務違反」を理由とする損害賠償を請求していた残りの5人については証拠上、浮島丸に乗船していたとは認定されず、請求は退けられた。同じく、遺族についても債務不履行に基づく法律関係の直接の当事者でないとして、慰謝料請求は認められなかった。このほか、原告側が要求していた国の公式謝罪や立法不作為による賠償請求など、いわゆる「戦後補償」にかかわる訴えについてもすべて退けた。
 原告は第2次大戦中、青森・大湊海軍施設部や三沢飛行場などに徴用され、解放後に帰国のため大湊港から浮島丸に乗船した21人(提訴後一人死亡)と犠牲者の遺族ら59人。92年8月から3次に分けて提訴していた。 原告は判決後の記者会見で控訴しないことを明らかにした。
 日本国に賠償を求める戦後補償裁判は48件(現在係争中の訴訟)ある。このうち国に賠償を命じた判例は、韓国人慰安婦らに対する98年の山口地裁下関支部判決(広島高裁で逆転敗訴)、強制連行から逃亡した中国人男性に対する今年7月の東京地裁判決に続いて3例目。

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浮島丸事件とは

 第2次大戦中、青森県下北半島などで強制労働させられた韓国人ら約4000人を乗せて大湊港を解放直後の8月22日、釜山港に向けて出航。24日夜、立ち寄り先の舞鶴湾で爆発、沈没した。原因は米軍が敷設した機雷に触れたためとする説がある一方、韓半島に渡るのを恐れた日本人乗組員による自爆説もある。韓国人524人と日本人乗組員25人が死亡したとされる。

(2001.08.29 民団新聞)



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