近鉄のタフィ・ローズ選手が55号本塁打を放った。プロ野球記録に30数年振りに並ぶ、記念すべき大アーチである。
その前々日、スポーツ面の片隅に、かつてこの大記録にあと1本と迫った経験を持つ、ランディ・バース氏のコメントが寄せられていた。阪神が初の日本一となり、彼自身も3冠王とMVPに輝いた85年当時に思いをはせていた。
最後の2ゲーム、消化試合ながら巨人の投手陣は、ただの一球もストライクを投げなかったそうだ。怒りにまかせて遠いボール球にバットを伸ばし、シングル・ヒットにするのが精一杯だったと回想している。
だがそれでも、今は相手ピッチャーの気持ちが理解できるのだと言う。巨人・王監督が持つ偉大なレコードを、ガイジン選手が破るようなことは、あってはならないことだったのだと。
だが今や、イチローを筆頭にワールド・ワイドな活躍が当たり前の時代。彼の首位打者獲得がかかる場面で、勝負を避けるチームは大リーグには存在しない。
ローズが56本目に挑む。この原稿の時点で残り1試合。プロ野球はドラマを見せられるのだろうか。
いつの日か、張本の3000本安打や金田の400勝を超える選手が現れたとしても、類い希なるアスリートと同時代に生きられたことを素直に喜び、称えられるようでありたい。
それにしてもあの頃のタイガースは何処に?(S)
(2001.10.03 民団新聞)
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