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やり場のない怒り



 関東地方で数年前、アジア系外国人が女性に暴行を働くという噂話が流れた。地元警察の捜査の結果、まったく根拠のない風評だと判明したが、地元住民は一時、パニック状態になった。これは、増え続ける外国籍住民に対する違和感を背景にした事件だった。

 ところが、今回の狂牛病騒ぎは極めて人為的な災害だった。事実を隠そうとするあまり、二転三転した厚生労働省と農林水産省の対応。両省の責任者が牛肉を食べて消費者に安全性をアピールしても、焼き肉業界の怒りは治まらない。

 「安全宣言」が出たいまはいざ知らず、ある官庁の食堂からは一時、牛肉を使った料理がメニューから消えたというし、学校給食でも、いまだに牛肉を危険視しているというちぐはぐさ。こんなことでは家族の食生活を預かる主婦の心をとらえられまい。

 売り上げが3分の1に激減、今月いっぱいで店を閉めるという都内の焼き肉店主が悔しそうにつぶやいていた。

 「韓国には牛の脳味噌や目玉を食べるという食習慣はない。たとえていえばタバコのほうがもっと危険だし、道を歩けば交通事故にも遭うし」と。

 狂牛病の余波を受けてリストラされた従業員も出ているという。彼らにとって今年の冬の寒さはさぞかし身にしみることだろう。

 風評被害は結局、いちばん弱いものを犠牲とする。

(K)

(2001.10.24 民団新聞)



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