民団新聞 MINDAN
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狂牛病・「安全宣言」出たが消えぬ不信



牛肉の「安全」をPRする都内の焼肉店(新橋で)

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同胞焼肉業界に打撃・売り上げ減で閉店も

 日本の敗戦直後に在日同胞の生活の知恵から生まれ、いまや外食産業の雄にまで成長した焼き肉業界が、牛海綿状脳症(狂牛病)にまつわる牛肉不信≠フため大きな打撃を受けている。売り上げは軒並み半減、東京では店じまいするところも出ている。日本政府の「安全宣言」も、学校給食で牛肉を控えている現状では説得力を持たないようだ。年内までに客足が回復しないと、倒産旋風が吹き荒れると心配する声が強い。

 東京の渋谷で老舗の焼き肉店を経営する李康則さんは、10月いっぱいで店じまいする。毎日平均30万円から40万円あった売り上げが9月から徐々にダウン。いまや20万円以下に半減、ひどいときは5万円にも届かないという。「日本人の熱しやすく、冷めやすい性格に期待するしかないと思っていたが、もう限界。従業員の給料も払えなくなる」と李さん。

 都内などで肉の卸業と焼き肉店を経営する李忠男さんは、「O(オー)157のときは『焼けば安心』といえた。今度ばかりは根が違う。特に学校給食で牛肉を取りやめたのが大きい。主婦層への影響がモロに出ている。ファミリー層の客足が遠のいた。行政が大丈夫といっても文部省がダメとは対応がチグハグ」と怒りが治まらない様子。

 甲府市内で複数の焼き肉店を経営する朴喜雄さん(民団山梨県本部団長)は、「来年1月までには7、8割がた回復するのでは。あと2、3割はさらに数ヵ月続く」とみている。しかし、回復が長引けば長引くほど業界に与える影響は大きい。李忠男さんは「12月までには回復してくれないと、目に見えて倒産が増えてくる」と心配している。

 李忠男さんは卸問屋や市場から出る「出荷証明書」を店に張り出し、病気にかかっていない安全な牛であることをアピールしていく。さらに業界全体で「安全宣言」を出すなど、消費者の信頼回復のための対策を待ち望んでいる。

 一方、赤坂で店をかまえ、常連客を多数抱える韓英子さんは「私たちは日本の厚生省の許可を受けて肉を売っているのであって、日本政府の後手後手の対応には怒りを覚える。今まで以上に国が商売できるように守ってほしい」と憤慨を隠さない。

 また、六本木を中心に焼き肉店チェーンを展開している業界大手の新井泰道社長も「私たちに打つ手はない。日本政府はこれまで騒いだ半分だけでも金を出して安全PRをしてほしい。あと、給食で牛肉を使うことが事実上の終焉宣言だと思っている。それがあって初めて正常になる」と話している。


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関連産体別に安全PRを

 月刊『焼肉文化』代表朴健市さんの話「チグハグで後手の対応に終始してきた日本政府の責任は大きい。『安全宣言』を出しても、消費者にどれだけ信じてもらえただろうか。事態を収束させるためには、卸売業者、と畜事業者、食肉加工業者など関連産体単位で安全性をPRしていく以外ない。もう一つ、牛肉の給食解禁も急がれる」


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国民公庫が低利融資

 日本の政府系中小企業金融機関の一つ、国民生活金融公庫では「牛海綿状脳症(いわゆる狂牛病)関連特別相談窓口」を全国152の店舗に開設、国産牛肉の消費減退などにより影響を受けた食肉販売業者、牛肉の取り扱いの多い飲食店営業者に対し16日から衛生環境激変特別貸付の取り扱いを始めた。

 ◆対象 (1)最近1ヵ月の売上高が前年または前々年の同月(営業歴が1年未満の場合は最近1ヵ月を含む過去3ヵ月の売上高の平均高)に比較して10%以上減少しており、かつ、今後も売り上げ減少が見込まれること(2)中長期的に業況が回復し、発展することが見込まれること

 ◆使途 資金繰りを安定させるために必要な運転資金

 ◆融資額 狂牛病発生前の借入額とは別枠で1000万円以内。担保、保証人については相談に応じるとしている

 ◆返済期間 7年以内(うち据え置き期間1年以内)

 ◆利率 0・9%

 ◆取り扱い期間 02年4月30日まで

 ◆必要書類 振興計画認定組合の長が発行する「振興事業に係わる資金証明書」と生活衛生営業指導センターの発行する「衛生環境激変対策特別融資に係わる確認書」

 このほか、国民生活金融公庫では従来通り経営安定貸付(狂牛病対策)と生活衛生経営安定貸付(設備資金)を取り扱っている。

 問い合わせ先は国民生活金融公庫東京相談センター03(3270)4649、同名古屋相談センター052(211)4649、同大阪相談センター06(6536)4649

(2001.10.24 民団新聞)



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