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慎武宏の韓国サッカーレポート


<アジアの虎の鼓動>
サッカーくじ解禁

まだ貧弱なスポーツ産業
“魅力のあるリーグ”に



10月から導入されたサッカーくじ

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城南一和が王者に

 韓国プロサッカー、Kリーグの2001年シーズンが終了した。21世紀初の王者に輝いたのは城南一和。6年ぶりの王座戴冠である。

 城南一和は92年から93にかけてKリーグ3連覇も達成したことがあるチーム。ただ、その後は低迷し、最下位に甘んじたシーズンもあったが、今季は99年Kリーグ得点王のシャーシャを獲得するなどしてチームを強化。昨年比50%増量となる120億ウォンを投資して選手層を厚くしたことが優勝の決め手になったと言われているが、私の見たがきりだと負けないサッカー≠ノ徹したことが大きい。事実、今季のKリーグは稀に見る大混戦となったが、全27節で城南が黒星を喫したのはわずか4試合。勝つサッカー≠ナはなく負けないサッカー≠ノ終始したことで掴んだ優勝だった。

 さて、城南の優勝で幕を閉じたKリーグだが、今年は歴史的な出来事が起きている。日本でも今年からサッカーくじが解禁したが、韓国でも10月からサッカーくじが導入されるようになったのだ。『スポーツ・トト』の名で導入された韓国のサッカーくじは、日本の『toto』と事業概要が似ているが、予想対象は大きく異なる。

 チーム数が多い日本は、J1、J2を含めた14の試合結果だけが予想対象になっているが、Kリーグは10チームしかないこともあって、最終的な試合結果だけではなく、前半を終えた時点での勝ち、負け、分け≠燉\想するシステムが採用されている。サッカーくじを経験したことがある人ならわかると思うが、これは相当難しい。「前半でリードして逃げきり」「後半で逆転勝利」など、勝ち方まで当てる必要があるのだ。

 実際、9月に首都圏を中心に行なわれたテスト販売では1位当選者が現れなかった。それだけに10月の第1回一斉販売では売り上げが振るわず、関係者をやきもきさせたが、幸いその第1回全国発売で一等当選者が出現。約一億ウォンの配当金を手にしたこともあって、2回目以降は売り上げも上向いた。『スポーツ・トト』は韓国プロバスケットボールでも導入されるが、関係者たちの関心も高まるばかりのようだ。

 というのも、『スポーツ・トト』はその収益金の一部が国内プロスポーツ振興に振り分けられることが決まっており、当面はスタジアム建設費、KOWOC運営費など、W杯関連事業に当てられることになっているのだ。スタジアムの建設費用やW杯終了後の活用策に不安を残す地方自治体にとっては、まさに打ち手小槌のような存在なわけだ。また、Kリーグの下部組織の運営費などにも収益の一部が当てられ、将来的には青少年のスポーツ育成事業にも使われていくことになっている。つまり、「スポーツは人生の成功を得るための手段」という考えが色濃い韓国に、健全なスポーツ文化を根づかせる牽引車の役割を『スポーツ・トト』が担うことになるわけだ。それだけに私も期待しているが、一抹の不安もある。

 というのも、韓国のスポーツ産業はまだまだ貧弱。先進国ではスポーツ産業がGNP比で3%前後なのに対し、韓国では1・5%に止まっているのが現状なのだ。そうした状況から脱皮するために導入されたのが『スポーツ・トト』なのだろうが、Kリーグが10チームしかないという弱体な段階から始めるだけに、本末転倒に陥る可能性は排除できないのである。


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“勝つため”めざせ

 実際、韓国では83年にもサッカーくじがあったが、未熟なリーグ運営などもあって、わずか2年の短命に終わった。『スポーツ・トト』が同じ失敗を繰り返さない保証はないのだ。

 それだけにKリーグ関係者たちは魅力あるプロリーグ≠常に意識する必要がある。そのためにはまず、勝つためのサッカー≠ノ全力を尽くすことだろう。負けないサッカー≠ノ魅力はないのだ。それは、優勝タイトルを勝ち取っても観客動員の面では苦戦した今季の城南を見れば、一目瞭然である。

(スポーツライター)

(2001.10.31 民団新聞)



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