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在日へのメッセージ

小田川 興(朝日新聞編集委員)



よみがえる歴史の重み

 安重根がハルビン駅頭で伊藤博文を射殺して92周年にあたる10月26日、ソウル・南山の中腹にある安重根義士記念館で特別追悼行事が行われ、鄭秉学館長の招請を受けて出席した。記念館訪問は3年ぶりだ。今回は館内がリニューアルされ、晴れのオープニング行事である。

 重々しいが、暗い印象だった館内は、見違えるほど明るい雰囲気に包まれている。以前は義士の一代記を年代順に羅列していたのを一新し、IT技術を駆使した展示が新鮮だ。ロシア警備兵のすきをついた狙撃の瞬間を動く立体画面で再現する装置は迫真力がある。

 目玉は検索コーナー。ワンタッチパネルで、安重根の30年余の生涯と抗日独立闘争の足跡、獄中生活、後世に所信を訴えた「東洋平和論」などを画面に呼び出して読むことができる。

 うれしいのは、説明文がハングルだけでなく、英語、日本語、中国語と4カ国語で表示されているのだ。

 展示の現代化は「韓国の現代っ子がもっと歴史に親しめるように」というねらいだが、これなら日本からの修学旅行生たちも安重根の息づかいに触れながら、植民地化の過程と独立運動家の苦闘について学べそうだ。

 安重根追悼式の約10日前、小泉首相は西大門刑務所跡の歴史館を訪れたが、ここの史料展示も開館当時と比べてよく整理された。「歴史の真実追求」という姿勢が伝わってくる。主要な展示には日本語の説明もついた。

 首相と金大中大統領は今回、歴史の共同研究に合意した。韓国の歴史資料展示の「国際化」はその一歩になりうると思った。

(2001.11.07 民団新聞)



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