民団新聞 MINDAN
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置き去りの20年・無年金同胞

厚労省・所得保障に消極的



同胞市民団体と話しあう
厚労相担当者(正面右)

 「年金制度の国籍条項を完全撤廃させる全国連絡会」(李幸宏代表)が5日、日本厚生労働省に国民年金法の抜本的是正と平等支給を訴えた。同連絡会は91年の発足時から毎年のように同様の働きかけを繰り返してきたが、今年も厚生労働省のかたくなな姿勢は変わらなかった。制度の狭間に置かれ間もなく20年。無年金の障害者、高齢者からは「いつまで放置しておくのか。もう待てない」との声が高まっている。


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「拠出制維持変えず」
同胞市民団体に回答

 衆議院議員会館で行われた話し合いで全国連絡会は、厚労省側に障害基礎年金や老齢福祉年金などに見合う代替措置を求めた。同時に、「無年金障害者の所得保障については福祉的措置の対応を含めて検討する」とした94年の国会付帯決議の履行を求めた。

 これに対して厚生労働省の度山徹年金課長補佐は「無拠出の福祉制度は国民年金制度発足時の例外的措置であり、拠出した人が受給するという掛け金制度が続く今は難しい」と従来の立場を繰り返すにとどまった。国会付帯決議についても「社会保険の原理でどこまでアプローチできるのか答えが見つかっていない」と述べた。

 59年に制定された国民年金法は当初から加入者を日本国籍者に限定、在日外国人を排除してきた。82年、難民条約発効に伴い国籍条項は撤廃されたが、外国人を救済するための経過措置はとられず、その時点で20歳を超えていた外国人障害者は障害福祉年金(現在は障害基礎年金)を受けられないでいる。

 また、当時35歳以上の外国人も老齢年金の支給対象にならなかった。高齢者についてはその後、86年4月時点で60歳未満の外国人には受給の道が開かれたが、金額はわずかでしかない。

 86年の年金制度改正において60歳を超えていたため、制度から落ちこぼれた盧末南さんは川崎市から支給される2万円の外国人高齢者福祉手当が唯一の頼り。医療費だけでも月8000円かかるだけに、2万円では生活が赤字になるという。盧さんは「日本人並みの年金を川崎市からではなく、国からもらいたい。日本人のために犠牲になった私たちにはもらう権利がある」と訴えた。

 同じく神奈川民闘連の金秀一さんも、「厚労省は無年金高齢者が死ぬのをただ待っているのか。いますぐに救済への答えを出してほしい」といらだたしげに訴えた。日弁連の是正勧告も無視


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日弁連の是正勧告も無視

 国民年金法が設立された時点でもすでに高齢で障害を持っている日本人はいたが、旧厚生省は無年金にならないよう措置をとってきた。あるいは沖縄や小笠原の日本復帰に際しても同様の救済措置をとっている。

 在日外国人はそれまで制度に加入したくてもできず保険料も納付できずにきただけに、本来は82年の国民年金法改正時点で同様の経過措置がとられなければならなかった。今日まで放置してきたのは明らかに内外人平等の原則を踏みにじる行為といえる。

 日本弁護士連合会(日弁連)も96年、国際人権規約に反し日本国憲法にも抵触するおそれがあるとして当時の管直人厚相に是正を求めている。また、今年8月にジュネーブで開かれた国連の社会権規約委員会でも定住外国人処遇の差別性が指摘されている。

 制度の谷間に置かれた無年金者は高齢者が75歳以上であり、障害者は39歳以上が相当する。高齢者は本来ならば月額34000円余りの老齢福祉年金が支給されるのにもかかわらず、わずかな福祉手当で10月からアップした介護保険料の負担が重くのしかかっている。また、障害者は月額83000円余り(1級)の障害基礎年金が支給されるはずだった。

 いまだに「いかなる方策でどういう対応を出せるのか答えを持ちえていない」と言い続ける厚労省の対応は、余りにも理不尽としかいいようがない。

(2001.11.07 民団新聞)



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